残暑見舞い申し上げ致します

皆さんまだまだお暑うございますね、最早まともな夏とは言い難いので、当分は水分沢山摂って日陰で大人しくして過ごしましょうネ…
因みに写真は先日仕事で福岡に出向いた際の帰路に立ち寄った、尾道での早朝の光景です。雲だけは秋の気配を思わせる物でしたので、皆さんに気持ちのお裾分けです。

さて、本題。
Dynavector/ダイナベクターと言う国産ブランドを御存知の方は、オーディオ趣味の方でも相当なマニアかベテランと言っても差し支えないでしょうね。
また、その名を耳にした事は有っても、日本国内での活動実態が極めてミステリアスに、即ち我々オーディオ販売店との付き合い方に於いて思われる節が多々あったので、市場の露出に於いて一般には尚の事影が薄かったかもしれません。更に同社は、英国アレックスモールトン及び自社ブランドでの非常に凝った機構とデザイン美を有した超高級自転車の輸入及び販売元なので、現代ではそちらの方での知名度が高い様に伺えます。
実際には今でも非常に高性能で高価なアナログカートリッジを多数揃え、更には質量分離型と云う、眺める角度や尺度によってはある意味、究極と言っても差し支えの無い性能/機能/機構追求型アームを数十年に亘って販売し続けています。
20~30年くらい以前までならサファイアカンチレバーのDV-17と云ったMCカートリッジやDV-505やDV-507といったアームはそこそこ秋葉原店頭やお客様宅でも見掛けた物でしたが、キャビネットとモーターとアームを各々選択して組む様なレベルでのアナログ製品のメーカー側での減少及び衰退、更にはそれを理解説明構築組立が出来る販売側の絶望的な減少に伴い、ダイナベクターは我々販売店から、恐らく1990年代後半辺りより静かに足を遠のけて行った様に感じます。
今ではその殆どを英米独で販売し切って居る様なので、要するに日本市場が期待されて居ないと言う事なのですが、日本の販売店は売れないから露出を減らす、更に売れなくなって扱いも減らすじゃ『国鉄末期のローカル線と同じで乗らないから本数減らす、減ったから不便でもっと乗んなくなると同じ悪循環じゃん!』って若い人には意味不明な駄々をダイナベクターに向かってこねてたら多少意志が通じたのか、昨年辺りから少なくともでんき堂に於いては取扱易いブランドとしての協力関係が築けるようになりました。

さて、長い前置きですが要するにその究極のアームの一本を、お客様の求めに応じて植えて参りました。現行のアームはDV-507MkⅡとなり、その価格も消費税を含めば標準価格であっさり120万を超す勢いで確かに高価なのですが、そもそも40年前当時はDynavectorのアームは国産では事実上一番高価なアームでしたが、2025年のアーム市場を見渡すとダイナベクターが一番高い訳でもなく、相対的には高級アームの範疇に於いてはちょっと割安感が出て来た様に感じるのは数字のマジックでしょうかね?
と言って見たところでこのアームが高価で精密で高性能である事に何ら変わりはなく、またその取り付けともなれば細心の注意が、特に事前準備で9割方成功の可否が決まってしまうので、まずはお客様宅へ出向き計測をします。

今回はドイツのトランスローターの既設アームとの差し替えです。新たに取り付けベースを用意してDV-507MkⅡの実効長241㎜よりオーバーハング15㎜分を差し引いた226㎜地点を所謂有効長とし、その地点を中心に29㎜φの比較的大きな取付穴の適切な位置の割り出し、アームベースを固定する三点の螺子位置がアームの向きを指定するのでその正確な位置決め、更にはトランスローターのベース取り付け自体も上面の観察からは伺い知れない複雑な螺子位置関係を有すので、散々計測を繰り返して補助線も引きまくって絶対の構えで臨みます。

計測を済ませたら一旦お客様宅を引き揚げ、自前の工場(こうば)で作業です。
現場での計測結果が間違いない事を自分自身に確認してから、覚悟を決めてエイヤと穴開けです。

適切な形状を得るべく補正修正を施し…

アームのエレベーター部を含むベース部品現物をあてがい確認です。
穴径と据え付け具合は完璧である事が確認出来ましたが、今度はこのアーム据え付けベースがお客様宅プレーヤーに再装着された際に誤差が無い事を願うばかりです。
一般論(アーム取付等と云う現代に於いての死語に近い稀少行為に一般も何も無いでしょうが)、取付に纏わる諸々を換算しての現実的な許容誤差範囲は前後1㎜だろうと思います。
最初の訪問から10日少々経ったある夏の暑い日、滅多に無い機会なので同行しますよと言ってくれるダイナベクターの営業と待ち合わせてお客様宅へ再度訪問です。

さて、早速アームベースを据え付けアームも植えて実測の緊張の一瞬、専用のプロトラクター/ゲージをあてがい…
おぉ!誤差なし、やったやったと素直にお客さんと僕と営業の三人で喜んでしまいました、流石にほっと一息です。私自身は比較的多くのアームを今迄取扱い植える機会と経験に恵まれているのですが、何しろ一般的な四角い木製キャビネットに直接計測で穴を開けるのと違って、今回は分離式ベースを個別に扱わざるを得ない関係で本当に気を使いましたね。

最後に音出し確認です。いやぁいい眺めですね、それに性能だけでなく見栄えも最高にカッコいいアームですね、本当に。その音は勿論理想的なトレースが与える極めて広帯域な物。私も昔から一本欲しいと思ってはいるのですが、なかなか簡単にはね…
と言う事で、でんき堂はDynavectorアームの取り付け取り扱いはある程度慣れてますと言っても多分ですが嫌味にも言い過ぎにもならないと思います、プレーヤーにアーム増設の余裕や新設の希望の際には是非当店を御指名くださいませ。
Dynavectorに限らずSAECやIKEDAの様に今でも優れたアームを提供するブランドは複数存在しそのどれもが優れた能力を有していますが、その性能が発揮されるかどうかは9割方組み上げ/設置で決まります。また、LUXMAN PD-171A/191系列やTechDASのプレーヤーに対しては私が態々穴を開けるまでも無く、Dynavectorのアームが比較的載せ易くベースの対応方法が当店では案内可能です。
現実にはアナログプレーヤーを組む、そのアーム自体も他社製でも旧製品でも構いませんが、アーム全般取り付けに応じたり相談したり出来るお店が極めて減って来たと伺いますので、ご用命、必要があらば是非一度でんき堂までどうぞ。有名高級店で購って組んで貰って全然間違った場所に組まれていたアーム位置の修正とか、30年間位置を間違ったまま使われて来たSMEの再設置とか、まぁそういう実例には実際枚挙に暇が御座いません。
勿論でんき堂がアナログやアーム取り付けの全てではありません、ただお伝えしたいのは、アナログはアナログが得意なお店で、アームはその植え付け位は当然出来る技量のお店で是非購入してあげて下さいネと言う事です。
噂に聞くDynavectorのアームを一本植えてくれぃ!
→0466-20-5223