皆さん今晩は、ここ最近雑誌仕事が立て続きコチラはすっかりご無沙汰でした、ごめんなさい。音楽之友社の月刊誌ステレオの7月号とか、音元出版の『季刊analog 』誌ですね。ステレオの方は寄稿側としては初出でしたが、アナログ誌はここ最近書かさせて頂く機会が続いているので『もう知ってるよ、くどいなぁ』と思われる向きもおられましょうが、7/3発売のVol.84 夏号では今迄で最長の4頁の担当。本来私は評論家でもライターでも文筆家でも無い、小規模オーディオ店販売員兼作業員兼責任者に過ぎないのでその筆運びは拙い部分も目に付きましょうが、編集部とのやり取り紆余曲折を経ての『ようも書いたな6000文字』にご興味ある方は是非ご一読くださいな、勿論その他の頁はより楽しめる筈ですなんてアピールはここ迄。
⇧木製回転シェル裏表、*手掛けは未装着状態の姿で撮影
さて、今回紹介したいのは写真に上げた回転ヘッドシェルです。難しい話は避けて簡単に述べると、アームを支点から眺めて作用点としての針先の振る舞いに絞って性能を追求した機構とでも言えば良いのでしょうかね。一般的レコードプレーヤーのアームはカートリッジの針先が盤面の溝をなぞる際のトラキング角度、一般的には12インチ盤で話せばターンテーブル回転軸中心から凡そ9~10cm地点で針先進行方向前後に対して盤中心から引いた線と直角で交わる様にアームにはJ字型やS字型と言った曲げが施されオーバーハングが図られていて、そこに纏わる解釈は非常に多岐に亘り複雑で様々な仕様が存在し、とても私では解説しきれないのですが、簡単に言うと盤外周、内周共針先は溝に対してトレースに角度が存在し、また常に溝の回転から生じる中心へ向かっての引き込む力や、それを打ち消す狙いでのキャンセラー機構と言った、アーム支点と針の作用点との位差から生じる様々な要素事象に晒されています。
先に上げたJ字型S字型以外でも、ストレートアームには大概先端でのカートリッジ取り付けには内向きの角度が用意されている物が多く、その他に盤面中心を直線に通過し外周にも内周にも基本的にトラッキングエラー角を生じさせない目的でのリニアトラック方式や、それらのアームとは対極的な思想の、アームの支点から一直線に伸びた地点にカートリッジ自体も直線的に据えて、ひたすら回転を元に溝から生じる針先への左右からのストレスを解消したピュアストレート方式等が存在します。
それらのアームはどれもそれぞれに特徴も特性も違うので、一概に同一尺で測った優劣を語る必要など本来ないのですが、ただ一つハッキリしているのは今更自由にアームが選べる仕組みが現代のオーディオ市場には極めて稀であり、あった所で最早高額過ぎるんですよね。
よってユニバーサルアーム搭載型のプレーヤーを用いてのカートリッジやシェル、リード線交換を通しての質や種類は追及出来ても、ふた昔さん昔の様に気軽にアームそのものを植え替えるなり増設して、レコード溝読み取り時の機構や機能を通しての作用面その物を変えちゃう愉しみは、令和のアナログでは極めて難しいのが現状なのです。
その上で今回ご紹介する木製、恐らく紫檀や黒檀と言った硬質な木材類の組み合わせで作られたこのシェル(製作者より詳細は企業秘密との事で、私もこれ以上は存じません)は、比較的気軽な価格帯で手元のプレーヤーの性格を相当に変えられる性能を有していましたので、今回ごく一部にのみ少数流通させていた製作者さんにお願いして当店での取り扱いの運びとなりました。
勿論今までも様々な提案の回転シェルは存在して居ますが、正直言って扱い難いか高額か回転機構がスムーズで無いかのどれかに該当して、店頭を通しての販売は躊躇せざるを得ない、或いは紹介すれどなかなか売れない等の部分が有りましたが、今回の木製回転シェルは扱い難いの部分、特にそのカートリッジ装着時の難しさを除けば、回転機構は良く働き価格も手ごろでかつ自重も10g程度と各種カートリッジとの組み合わせもし易く、何よりもそこから得られる開放的な鳴りの良さがとても魅力です。
更に、今回でんき堂としてこの回転シェルを取り扱うに辺り基本的にはカートリッジの装着費用込みでの販売のみとさせて頂き、先に述べた『扱い難い』の部分も解消しての販売と致します、その価格税込15,000円
勿論カートリッジ持込み歓迎です、うちで買った針以外は取り付けないとか狭量な事は言わないし、今まさに販売はするけど付けはしませんとか頓珍漢な事述べてる家電カメラ量販のオーディオコーナーで買って来たばかりのカートリッジでも構いません。現にここ最近実にこのパターンが多いし、酷いのになると家電カメラ量販ならまだしも、結構な知名度のオーディオ専門店でのカートリッジ購入者がシェル取り付けを断られての遠路遥々電車乗り継いでの持ち込みなんてのも数多です。
写真はDL103を組んでDENONのDP-3000NEで回している姿ですが、回転シェルのメリットである、或いはその構造故のオーバーハングの位置を気にする事なくインサイドフォースキャンセラーの実質不要故の、結果としてカンチレバーへの横方向への負荷からの解放がもたらす再生音には間違いなく一聴の価値を見出せる筈です。また私個人の感想としては普及価格帯クラスのアームやカートリッジにこそまずは用いて頂きたいシェルだとも感じました。
これはSHUREのM44系を装着した際の写真の横姿ですが、見て頂きたいのはそこに繋がるリード線ですね。回転シェルの作動の最もネックになるのがリード線(今迄の回転シェルは回転機構は優れていても、リード線の太さが結局その回転のスムーズさを阻んでいるケースが多いのです)なのですが、このシェルには0.06㎜の極々細線を用いてそこの不安を解消してあり、即ち私が今迄目にして来たリード線の中では回転非回転シェル問わずに最も繊細なリード線であり最も装着も難しいリード線で、それ故に装着込での販売に限定する理由なのですね、要するに迂闊に手を出せば簡単に切れます。
それでも尚
『お前よか腕はいいから黙って販売しろ』
と片手を挙げて宣言して下さる方には税込12,000円でお出しします、リード線も4本に加えてスペアで二本付属していますよ。
ともあれ今回なかなか良いシェルを紹介出来て大変嬉しく思います、皆様にも是非体感頂ければと願います。但し、製作者の方曰く月産3~5個が限度であり、私自身もこのシェルへのカートリッジ装着はその求められる技量と神経の消耗度を考えると1作業30分程度、一日三個くらいの装着が限度かなと考えます。よって常に即納とはいかない場合も御座います、お求めの際には是非予め一声頂ければ幸いです。
木製軽量型回転シェル、装着費用込み15,000円税込→0466-20-5223