皆様今晩は、日没後には夏の終わりの風が吹く時期になりましたね、まだまだ暑い事には変わりませんが。

さてお仕事。
旧ビクター系の技術陣等を引き継いで堅実なアナログ製品を提供し続けるフェーズメーションのアナログカートリッジ群はなかなかの高級/高品質な製品揃いですね。その中でも比較的同社の音質を体感しやすいのが青く輝くボディーが魅力の『PP200』です。今日はそのMCカートリッジを同じくフェーズメーションのシェル『CS-1000』に組み上げて納品です。

 

 

写真は無事組付け終えて、音出し確認をしている様子です。因みに購入された方には基本的にこの状態と後ほど出てくる針先顕微鏡拡大写真を添えて納品しています、なかなかそこまでするお店も無いのか、結構評判のサービスですよ。
先程比較的体感しやすいとは書きましたが、フェーズメーションとしては最も廉価とは言えその価格はカートリッジ単体で10万円に迫るもの、私は仕事であり根本的にそれが好きなので年間に300個近いアナログカートリッジの付け外しに携わるのでまぁ流石に何とかなりますが、大概の方にとってこのクラスのカートリッジを安全にシェルに据え付けると言うのは、技術的にも精神的にもストレスが高いのは事実です。
以前からここで繰り返し述べていますが、私はこういった高価なものを趣味だからの理由で個人で装着して当然的な風潮が大嫌いです。正直言いますがアナログカートリッジの付け外しは誰にでも簡単と言う気にはとてもなれないし、マニア度も関係ないと思っています。ハッキリ言って経験と技量と慎重さが全てです。お客様に対して『何ならカートリッジをお取り付けこちらでしますよ?』と言うと、自分の技量を疑われたと感じられてしまうのか、オーディオ歴数十年を誇り余裕をかます方も稀におりますが、その勢いで高価な針をブチ折った方を残念ながら沢山存じています仕事柄。
オーディオ何十年やっていても人生で10回以上のアナログカートリッジのシェルとの付け替えを、ましてやそれが数万10万何十万円のカートリッジをなんて方は実際滅多にいません。大抵の方にとっては高価なカートリッジのシェル装着などと言う恐ろしい体験は人生において初めての経験であり、そう何度も体験できないものでもあります。要するに何を言いたいかと言うと、音の良い高価なカートリッジはそれを購える方にはどんどん購入して頂きたいのと同時に、だからって皆が皆全てを自らの手に委ねなくてもいいですよと言う事です。こういった話をすると稀に、年齢と経験を業界で重ね過ぎたジジィ関係者系が『カートリッジくらい自分で付けようよ』と見下した態度をとる人間が居ますが、私は必ずその際こう言います。
『あんた車何乗ってんの?へぇ随分いい車ですね、趣味性高い高級車ですね、で、その車の電装系自分で弄るんですか?タイヤ交換最近自分でしましたか?オイル交換フィルター込みで自分でやってる?』と聴けばまず間違いなくディーラー任せです。
『じゃぁ趣味性高い車乗ってる割にはそんな事も出来ないのか?って言われて不愉快には感じないの?たまたま僕は車も趣味だから自分でいじるけど』と言うと皆黙ります。
要するにオーディオは趣味であり確かに金もかかりますが、だからって自分でこんな高い針を危険に晒して迄リード線繋いだりシェルに留めたりしなくていいですよって言いたいのです。正直言ってタイヤ交換とかオイル交換の方が労力はともかく技術的にはカートリッジのシェル装着よりはるかに簡単ですよ。今まで3000個以上は装着してきた私の個人的意見ですから参考にするかどうかは皆さんにお任せしますが、いい車に乗っていいタイヤ履くのに、今時自分の手を汚したり高い技量を要求される必要などないでしょうし、良いオーディオ装置で高価なアナログカートリッジ愉しむのに怖い思いしなくていいんじゃないですか?私みたいにそれ自体が好きな人間だけが自分でキャブ弄ったりリード線繋いだりしてればいい訳で、誰でも自由に好きな物を手に入れて、面倒臭かったり危なっかしい部分はプロに任せればいいじゃないですか、と言うごく当たり前の事が一番出来ていないのが実はオーディオ業界です。
その最たる例がこういった高価なカートリッジを激安ポイント込みで売り散らかしながら取り付けには一切応じる姿勢を見せない超大型カメラ量販の様な存在ですね。たとえ工賃を払うからとお願いしても取り付けしてくれません。因みにエアコン買えば工事業者手配してくれるのに、それより遥かに高価なアナログカートリッジ製品買っても絶対付けてもくれないし、しまいにゃ予めその旨断りが店頭張り紙迄してある始末だし、エアコン取付業者は手配してくれるけど、アナログカーリッジ装着のプロは手配してくれません。よって皆さんそう言ったお店で購った高価なカートリッジを手に当店を訪れて下さいますし、私はそういった持ち込みに対して勿論嫌な顔は致しません、喜んでお受けしています。何故なら私自身も趣味のカメラも古い車も、自分の手には負えない部分は常に専門家、プロと呼ばれる方々の手に委ねますし、それらは全て持ち込みである以上、私にとって皆様が持ち込まれるオーディオ製品は全てその流れと同じに過ぎないのですね。

 

 

些か話が長くなりすぎましたが、今回はそういった方々に安心して購入即手元のプレーヤーに据えて愉しめる様にシェル装着済みとして販売させて頂いているものです。その際にお客様の使用になられるプレーヤーをお伺いし、今回はテクニクスのSL1200系列だったのでシェル根元から針先位置を52㎜に設定して先程の写真の様に音出し確認と針先顕微鏡確認も済ませて納品です。

 

 

納品価格にはカートリッジ代とシェル代プラス、僅かばかりの技術料が入って居ますが、ワンミス10万円に比べれば全然安いですよ。皆さんもどんどん好きなブランドの買える範囲の良い物を自由に選択してその取り付けはそれ自体が趣味でない限り、どんどん近所のオーディオ屋さんの専門家に取り付け依頼してください、その上で対応をして貰えなかった時には、当店へ持ち込みや送り込みで頼って頂いて一向に構いません、勿論購入取り付け一式最初から当店への御依頼は勿論一番歓迎ですが(笑)
好きなカートリッジと好きなシェルと気になるリード線と音が良くなりそうな螺子を組んで(組まさせて)どんどんアナログを自由に愉しみましょうよ!

 

所で文中散々偉そうに車を弄る様な事書き散らしていた私ですが、つい先日、好きで乗っている古いポンコツ英国車のラジエターが漏ったんで、已む無く自分で降ろして半田漏って直したですよ、で組みなおして水圧掛けてみて我ながら上手く行ったなと悦に入って、早速近所に試走に出掛けてキャブ安定した頃合い見計らってアクセル踏み込んだら、なんと締め忘れていたボンネットを見事に吹き飛ばしたですよ、一歩間違えば事故だしとんだ散財ですね、やっぱりプロに任せときゃよかった…

因みに私は自分自身の趣味に於いて、こういったしょうもないミスは実に沢山犯しながら何十年生きてきましたが、プロとして携わる自らの仕事に於いては皆様のカートリッジで失敗したことはございませんので安心してご依頼くださいませ!

 

フェーズメーション製品もアナログカートリッジの取り付けも→0466-20-5223