AETと言うオーディオアクセサリーブランドは少々ミステリアスな所があって、当事者があまり出たがりではないのか、WEBサイト等もちょっと見ずらかったりするのですが、派手な露出はしないのですが時折突発的に『そこ衝く?』と我々を驚かす様なアイテムを市場に投入してきます。
そんなAETに最近私達が瞠目させられたのが、今回紹介するEVO-CSSHというアナログカートリッジ用のネジですね。
普段アナログカートリッジのシェルやアームへの取り付けは、一般的に2.6mm径のネジでもってそれを行うのですが、今回は何とその僅か2.6mm径の中心に対して孔を開けて中空ネジ構造としてきました。これは本当に大変な技術と手間を伴う作業ですね。聞く所によると、なかなかこの作業を請け負えるだけの技術を持った製作所が見当たらずに苦労したそうです。

 

 

写真は当店でお馴染の、DL-103ネイキッドのネジをお客様の御依頼で件の中空ネジへ換装した姿です、右に転がる二本は外したネジですね。
カートリッジ脇の二本のネジ中央に小さな丸孔が貫通しているのが確認頂けると思います。私は最初にこのネジを手にして思ったのはキャブレターのジェットですが、そう言っても今更キャブレター(自動車やバイクなどのエンジンに用いる燃料気化器、二昔前は自分で調整する範囲・・・)じゃ分からないか、ともかくエライ物をこさえたなと言う事です。
そもそも技術が凄いのは分かるけど、ネジのセンターに孔開けた程度で何か音に良いの?と言う疑問が湧く方も中にはおりましょう。ハッキリしている事は、アナログカートリッジをシェル等に据える為に市場に出回っているネジは、標準的なアルミ製のネジに加えて、チタン、ステンレス、真鍮、鉄等が存在し、そのどれもが同じ針/シェルに対して用いる毎に、それぞれ違う表情でもってその音を表現してきます。更にその締め具合でもかなり音の変化を確認出来ます。故に素材質量固有の鳴きや響きの最小化を狙っての中空化は当然大きな振動、音要素となりえ、再装着後に店頭で試聴したその音は、ただでさえDL103をネイキッド化した上にスペーサーや銀線のリード線を奢って『もうこれ以上は触る場所ないかな?』って感じていた相当な再現力を示すこの針からも、更に高域の解放感と伸びやかさを引き出して来ました。

長さ12.5mmと8.5mmがそれぞれ二本ずつ入ってネジ四本セットです。それが13,200円税込なので、たかがネジとして見れば確かに高く感じるかもしれませんが、その価格で得られる音質変化としては、アナログ周辺のアクセサリー群の中に於いて決して高くはないなと言うのが私の感想です。
勿論オーディオ、アナログ、カートリッジ周りと言うのは、些細で慎重で精密な作業の積み重ねで漸く良い音を得られる世界ですので、その音の善し悪しをネジだけに帰す積りも毛頭御座いませんが、かなり重要な位置を占めている事も間違いないと思いますよ。

先に記しました通り、長さは二種類、技術的にこれ以上長い物は現時点では無理な様子です、よってカートリッジのネジ留め位置高さと組み合わせるシェル厚み如何によっては長さ的に対応出来ないカートリッジも沢山ありますので購入の際には十分その点を留意してお求め下さいませ。
また、取り付けに関しましては、たかがネジ交換と侮らずに出来る限り腕の確かな専門店へご依頼下さいませ。勿論でんき堂はカートリッジ、シェル、ネジ全て他店購入品でも取り付けに応じますので、遠方の方でも遠慮なく申しつけ下さいませ。

このネジは私も欲しいなって思っています・・・

俺のカートリッジに中空螺子を奢ってくれぃ!→0466-20-5223