先日の予告通りにテクニカのAT-OC9Xシリーズの事を少し書いていきましょう。

今回、この9の番号の付く系列のMCカートリッジが同時に5種類も出て来ました。1987年の初代AT-OC9以来、途中製品的空白期間があったりしながらも、9の型番を戴いたカートリッジは各時代毎に市場にお目見えするのは一種類だけでしたが、今回は空前のバリエーションを揃えての一気呵成的な勢いでの展開です。私も何故かいな?と疑問に感じながら彼らの資料に目を通して漸く理解しました。つまり今回この9系列に対して、今までテクニカがMCカートリッジ作りに於いて採用して来た技術を一通り採用してみたかったのでしょうね。

それぞれに採用した技術や素材によって、AT-OC9XSLの98,000円から下はAT-OC9XEBの29,000円(価格は全て税抜き)と5つのグレードが揃いました。或いはその価格は戦略的でもあり採用した技術と素材に左右されているともいえます。全5モデルに共通した、テクニカお得意のPCOCCのコイル線材及びマグネットにネオジウムを用い、カンチレバーにボロンを採用しヨーク素材にパーメンジュール(鉄とコバルトを1対1の割合で混ぜた合金)を使用したラインコンタクト針のAT-OC9XSLを筆頭に以下、シバタ針のSH、マイクロリニア針のMLの3モデル、アルミパイプカンチレバーを採用しヨーク部には純鉄を用いた無垢楕円針のEN、最後に接合楕円針のEBの2モデルと続きます。ここから凡そ分かるのは、カンチレバーの材質とヨーク部材の違いからくる、SL、SH、MLの3モデルと、EN、EBの2つのモデルで大きく分けて二つの音質傾向が存在する事がまず伺えます。上の三つが繊細さと解像度を優位とし、下の二つがエネルギー感と力強さを基本としている程度に理解すればいいと思います。
尚、無垢と接合の違いはありますが、ENとEBは針先形状も含めてほぼその他の項は諸元から得られる内容を見比べてもほぼ同等性能を有していると言えるでしょう。価格的には45,000円と29,000円となり結構な差ではありますが、さて如何でしょう、無垢と接合針以外の差がほとんど感じられない両者に対してこの価格差は、テクニカMCカートリッジの入門機的位置付けを与えられたEBの立ち位置故の必然なのかもしれず、最廉価の設定は性能ではなく彼らの戦略を背負った故の非常にお買得な存在と言えるかもしれません。

以降はまた次回・・・

 

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