写真は1973年頃の製品で当時はコロムビア/デンオンと呼ばれていたDENONブランドのトランス、AU-320ですね。コチラでも何度か登場した当時の人気製品で、今となっては貴重な製品です。個人的には入力に系統の切り替えとPASSポジション付きのインピーダンス切り替えがとても良いと思っています。
1973年即ち昭和48年当時に16,000円と言う正札は当時の大卒初任給が凡そ50,000円程度なので、物価対比的にいえば今の6万円を超す様な価格と言う事になりますが、製品内容的に現代に同等の物を求めるならば10万円払ってもちょっと危ういかな・・・
今じゃ考えられないですが当時このクラスの製品を10代後半から20代前後の皆さんが沢山買い求められた訳ですよ、で、その方々がそのまま40数年の時を経てコチラを当店に持ち込みになられます。何十年ぶりにかたした実家の倉庫から出て来たコチラを再稼働させたいとか、まぁそんな塩梅ですね。
当時の青少年たちはすっかり酸いも甘いも咬み分けて大人になり更には通り越し、再び若かりし頃の青春の思い出を手繰ってアナログに帰結します。私の仕事はそんな自分より遥かに人生の先輩方のそういった思い出の品々の戦線復帰への僅かばかりのお手伝いです。
さて、トランスはそもそも落下水没でもない限り基本的に壊れるファクターは御座いません。このタイプの場合は基本的に接点磨いて、少々くたびれて来た端末さえどうにかすれば素晴らしい能力を発揮します。前回触った同じ物に比べコチラは幾分程度も良く、箱を開けて内部を覗いても、ボロボロになりがちなトランス保護のスポンジは弾力さえ残っていると言う保存状態の良さを窺い知れる物でした。よって今回は端末をswitchcraft3502に取り換えた程度です、ボディと端子も少々磨きました。
試聴でDL103を昇圧掛けて音出ししてみると、持ち込んだお客様も驚く鳴り具合、横で聴いてて私も嬉しくなる瞬間です。

時は令和の御代、平成を飛び越え物作りの姿勢が良かった時代の製品が再び息を吹き返す姿は、仕事を通り越した清々しさを覚えますね。
皆さん、今から46年後に、直してまで使える、使いたくなるような製品を我々の生きる現代の社会構造が作ってると、携わる側に、求める側にその気概があると思いますか?
まぁその頃には流石に私にも関係ない時代ですが・・・

 

学生時代に無理して買ったトランスが納屋から見つかった、親からもらった、オークションで入手した、ちょっと見て欲しいと言う方は → 0466-20-5223