皆さん今晩は。
やたらと早い梅雨明けの翌日にはもう蝉の声を聴きました、どんどん環境が壊れて行きますね…

さて、お仕事。

アクロリンク/ACROLINK 7N-S1400 Leggenda と言うメートル当たり16,500円もする超高級スピーカーケーブルを仕上げるのが今日の私のミッションです。純度の高い銅線を被覆越しに全体に亘って銅箔を巻き付け、更にプラス・マイナスの二線を軟性質の長円の断面を持つ被覆内にドレインを挟んで並行して配した凝った造りのケーブルです。今までにここで紹介して来た他の高級ケーブルと違って、極端な多芯構造だったりはしないので、それ自体は剥く手間自体は少ないのですが、美しく仕上げるにはその構造故にひと工夫が必要です。
AIRLOC処理は個人で難しいですが、それ以外でこのケーブルを自身で剥いてみたい方の参考にはなりますので宜しければご覧くださいネ。

 

 

まずは刃先を被覆に充てて綺麗に剥きとります、私の場合はこのタイプは15cm程剥き出しますが、使用するシステムや仕上がりの美しさを加味しながら実際の長さは決まります。作業時の注意点は当然ながら内皮には傷を付けない事ですが、ここは正直言って経験が全てです。職業柄、個仕上げメーカー製問わず人様が仕上げたケーブルを見る機会が多いのですが、大概が内皮にも刃が当っていて基部で芯線が顔を見せて居る様な状況がとても多いのですね。また被覆を抜く際に、このケーブルの中央を赤白被覆を被った導体の中央を走る黒いドレインを千切らない様にヒートガンで全体を温めたりしながら丁寧に抜き取ります、ドレインが残る様に抜く理由は後述致します。

 

 

次は先程慎重に残したドレインを剥いた基部より1cm程度の所で切り取ります。1cm残す理由はこの後端末を美しく仕上げる為に収縮チューブを被せて熱処理施すのですが、ドレインを残さず切り取ってしまうと熱収縮処理時に左右のケーブルが内側に引き寄せられてしまい、左右平行に導体が伸びるこのケーブルの仕上がり時の美しさを損なうからですね。被覆を慎重に引き抜くのもそれが理由で、無造作に刃を当て外皮を引くとこのドレインが剥いた基部から千切れてしまい、1cm程度残すことが叶わなくなるからです。まぁこの構造のケーブルに限った手法では有りますが、ともあれケーブル毎に色々な構造があって、それぞれ求められる技量や求められる作業は都度違うと言う事です、先ほど作業時の注意点で経験が全てと言い切った理由も、多少はご理解頂ければ嬉しいですね。

 

 

先に述べたように剥いた基部に収縮チューブを被せて熱処理した姿です。ドレインを残した理由がこの写真で伝わって居れば良いのですが如何でしょう?平行した二本の線の距離が保たれている姿が確認出来るかと思います。同じ作業を端末全てに済ませて、お次は各線毎にQED AIRLOC処理を施します。

 

 

はい、出来上がりました。本来の樹脂製プラグにも収縮チューブ施して完成形メーカー品の様な姿へ仕立ててあります。
今回の様な超高級ケーブルも勿論切り売りで自由に入手は出来ますが、その時点ではあくまでも高級な部材に過ぎません。確かに外装剥いたまま、撚線捩っただけでも機材に繋げば音は出るのでしょうが、奇麗で確実な処理を施された方が電気的にも精神的にも安定したものが得られるのは間違いないと私は思うのですが、皆様はどうお感じになられますか?ここまでの手順を眺めて余裕じゃんと感じた方は是非どんどんご自身でやって見て頂きたいですし、うわぁ、ちょっと面倒そうと感じた方はどんどん私どもにお仕事振って下さいね。

因みに私は基本的には何でも自分でやって見たい性格なのですが、プロの領域は理解して居る積りなので、趣味で乗る様な車も内装や電装はある程度自分で行いますが、ブレーキ周りや足回りやアライメント、エンジンは全てプロに任せます。機械式のカメラも好きですし調整も分解もある程度手を出しますが、レンズは自分では絶対にばらしません。先日魚屋の軒先でうまそうなヒラメを見掛けて、たまには贅沢すっかと思いましたが、せっかくなので愛想の良い大将に頼んで捌いて貰いました。自分で捌くのとは全然味が違いますね、やっぱり。
要するに、どの世界にもそれを専門とする方が居ると言う事です、その中で多少なりともケーブル類の端末処理等に関しては私にも一日の長があるかなと思いますので、そういった作業を任せて頂いてもそう悪い結果にはならないと思いますよ、と言う事ですね。

 

どんな高級スピーカーケーブルも、切った時点ではまだただの部材です→0466-20-5223