皆さん今晩は、ここでの挨拶もお久し振りです。
決してサボっていた訳ではないのですが、月頭に腰を痛めてしまい、全く困ったことにPCに入力する際の、画面の前に座るという行為が耐え難いものとなってしまい、まぁ立っているのも辛いのですが寝ながら仕事も出来ないので、日中はどうにか片手で体を支えながらの接客と、ご来店の皆様には失礼な姿は晒すは作成作業は大幅に遅れるはと、つくづく健康の重要さを噛み締めた一月間でしたね。皆様もお身体労わって下さいませ。
今日は漸く腰の具合も落ち着いたので直近の作業を少しご紹介です、それではお仕事…

 

 

こちらは恐らくノッティンガムのアームと思われますが、お客様からの持ち込み案件で、依頼内容は取れてしまったリードチップ及び新規カートリッジの装着です。
でんき堂はほぼ毎日何かしらのカートリッジ装着作業を行っていますが、年間300近いカートリッジ装着を行う私でさえ未だに怖れを抱きながら取り掛かるのがシェルのないストレートアームへのカートリッジ装着です。クラスや価格の大小を問わずにシンプルな構造と音質を追求したストレートアームは、現在事実上のアナログ製品の主流なのですが、このストレートアームへのカートリッジ装着程危険を伴う作業は無いんじゃないか?と私個人は考えています。
ユニバーサルアームの、シェルを外してのカートリッジ取り付け作業は、基本的知識と経験と慎重さがあれば、まぁそれ自体はどうにかなるとは思うのですが、ストレートアームの直出しリード線タイプは、もうこれは先に挙げた項目に増して、細心の注意力と繊細さを併せ持った技術力を要求されるという具合です。
特に高級になればなるほどそのアームから直接伸びたリード線は細く繊細になり、迂闊にその線を引いたりペンチでつまもうなら容易に断線し上記の写真の様にチップの欠落へと繋がります。シェル上のリード線ならば、それ自体は残念な出来事ですが、リード線自体の交換で済む話です。しかしストレートアームの線材はチップから先はアームの根元を経由して出力端子迄一本のゾロ引きですから、最悪切れたポイント如何によっては、アーム全体の内部配線引き直しと言うメーカー修理レベルになりえ、その金額はシェルタイプのリード線交換と比べれ大きく跳ね上がります。
実際に当店では数多くその手の修理依頼を数多く受けておりまして、写真の様に先端でのチップ脱落は店頭での私の技術範疇での修繕でなんとかなるのですが、それにしても容易な作業ではありません。
それらを作る各メーカーの方針なので口は挟みませんが、とても一般レベルの方が気軽に望めるとも思えないストレートアームへのカートリッジ装着が、現在のアナログ市場において製品展開数的には圧倒的優勢なのが正直なところ私個人としては不思議であり不安に思っているのは事実ですよ。技術料は確かに発生しますが、アナログカートリッジの取り付けに不安を覚えた際には、是非とも専門店にお任せくださいませ、本来はそれを販売したお店が行うべき案件ではありますが、まぁそれらを無定見に扱う家電量販に向かって吠えたところで最早たわ言レベルですよね。

 

 

今回のお持ち込み品はオークションサイトで入手されたとの事で、欠落したチップを付けた序に他のチップも指先で軽く弾いてみたら、おいおい取れちゃうよ、よくみりゃ何度か修繕した跡があって、その半田も未熟なレベルに感じました。結局二か所のチップをオリジナルレベル程度の美しさには装着し直し、依頼のカートリッジを据え付けます。
ここまで散々ストレートアームの恐怖を書き並べて来ましたが、勿論メリットも当然あって、シェル交換ではない故の接続接点面での優位性とシンプルな構造から来る高い音楽再現性は、ユニバーサルタイプに比して大きく勝り、それ故に気軽な針交換は事実上難しいと言ったところでしょうか。決してどちらが優れてるの様な尺度では私は考えませんが、一つだけハッキリしているのは、皆様が思うほどカートリッジ装着は簡単ではないですよと、ここだけは強調させて頂きますね。

 

 

お次は他店さんでortofon SPU Royal Nと言う、所謂メーカー公式SPUネイキッド仕様を、しかもかなりの高級品ですがそれを入手された方の持ち込み案件です。要するに当店がたまに紹介するSPUの側をひん剥いて一般シェルに装着してって奴を、メーカー自体が自らやって見せた製品ですね。よって予めカバーレスの中身だけのネイキッド状態のSPUと、それを一般シェルに据える為の専用アダプターの揃い組み状態での製品となっています。
そんな事に何の意味があるのかと考える方もおられるかも知れませんが、例えば先に紹介したストレートアームにはSPUはシェル一体式故に当然装着は叶いませんし、世の中の大概のプレーヤーが搭載するアームではSPU自体の総重量に対応して居ない事が多いのですね。そういった際には自由な重量のシェルを選択できるネイキッド仕様の出番となるのです。まぁこのortofon自らがボディを外して見せたOrtofon Royal  Nの場合は、積極的音質追及としてのボディレス化も強く感じはしますが。(→当店が普段行うSPUのネイキッド化も、その音質的良し悪しではなく、当然共振素材として作用するGなりAのケースがなくなった音質的変化は非常に顕著に現れます)

 

 

さて、慎重な作業の下、シェルに対して専用アダプターとネイキッド状態のSPUの装着は無事終了です。今回はお得意様でもあるお客様の協力を得て、近日発売予定のでんき堂オリジナルリード線をその接続に採用させて頂きました。既に数名の方々の協力を頂きながらその音質傾向を確認しているところですが、米軍の航空宇宙環境使用指定のMIL規格線から取り出した線材を、二本撚りで組み上げたこのリード線は製作者の思惑を超えたレベルの音を聴かせてくれる様子です。製品化して販売する際には2万円近いお金を頂かざるを得ない手間と技術が必要な案件なのですが、ここ暫くは試聴期間として、実験台として参加して下さる方には装着費用込みで1万円税込みで、このMIL規格線使用のオリジナルリード線を、あと10名程の方の耳をお借りしたいと考えております。興味のある方は是非お早めに一声おかけ下さいね。

 

あ、この作業は自分では危ないなと思ったら→0466-20-5223