皆様今晩は

例えばオーデイオを趣味としたとしても、人によってそのアプローチは様々です。それ自体を愛好していたとしても、電気や機械に皆が皆強い訳でもないのもまた事実。雑誌や店頭で高価な電源線やプラグを見掛け、こういった高価な部材で自分だけの電源ケーブルを作って自らのシステムに使って見たいと思うのはごく当然の流れでしょう。ただ実際にはそう簡単な作業でも無く、慣れと経験と技術、更に相応の工具類道具類も揃えなければなりません。決して気軽に部材だけ買ってすぐ組める訳でもありません。そこで良くある話が、身の回りに居る自称それを得意とする方々の存在が、勿論親切心からですが、じゃぁ僕が私が作ってあげようって流れです。友人知人サークルの仲間、まぁ色々ありましょうが、今回はそういったケースでの、かなり危険な事例の紹介です。
尚、予め申し上げますが、如何に記す内容はたまたま私が預かった今回の仕事の作業の流れでの、目の前の事実から得た推測も多分に含めれています。決してこのケーブルを作成した方を曝したり貶めたりする目的で無い事はご理解下さいませ、どなたにも起き得ると言う程度にご理解下さいませ。私も数十年前に初めて作った電源ケーブルの仕上がりは、とても人様にお見せできる状態ではありませんでしたので・・・

 

 

最初に電話をお客様より頂戴し、このケーブルを所有の方から、電源ケーブルの手直しをして欲しい、ブログで見掛ける内部の角圧着処理をお願いしたいと相談を戴き、いつもの流れで気軽にお受けしそれをお店に送ってくれるように伝えました。届いたそれは一見して高価な線材に高価なプラグで組まれた物である事が分かりました。

 

 

さて、早速分解して目にしたそれは衝撃的光景でした。作成時のドレイン処理が甘く、なんとシールドが通電状態、場合によっては感電や発火の可能性も生じかねない事態に流石に私も驚き、慌てて依頼主に電話を掛け、そこで初めてこのケーブルの実際の経緯を知ったのです。即ちお知り合いの方が作ってくれた物で、当人には言えないけど、どうにもその仕上がりに疑問符が付く状態であると。ただ自分はそういった知識に乏しく一度専門家の目で確認して欲しかったと。

 

 

それ以上は、私もこの状態を目にすれば凡そ何が起きているのかは察しが付きますので、根掘り葉掘り詮索はせず、とにかくその人が作ったケーブルは全部一度見直した方がいいですよ、とだけ伝えて作業続行です。接続は良く見掛ける状態で、プラグ内では芯線の半分程度しか噛めていませんでした。枝毛も出ていましたね・・・

 

 

また、内部で線材を留めるクランプと、一部高級プラグが用いる、アースをボルトに流すショートバーも加減を間違えた締め上げでもされたのでしょう、破断していましたので、当該メーカーに頼みこんでパーツを用意して貰って交換しました。

 

 

縮れてイジケた先端は切って剥き直してQED AIRLOC応用の角圧着処理を施します。左がそれで右は剥いた状態です。尚、ケーブル作成時にはこの角圧着処理は個人では無理でしょうが、剥いた線材を直接プラグ内螺子へ締め上げる事は個人的にはお勧めしていません。三つ前の写真の様な姿になるのがオチで、通電的にも全く好ましくありません、何かしらの電気配線用の端子を装着する事をお勧め致します。

 

 

角圧着処理の断面です。多数芯線が全周囲からの強力な圧力によって見事に一本の金属棒状化しているのがお分かり頂けますか?この状態にしてからプラグ内螺子へ協力に締め上げます。理想の接点の実現と言う訳ですね。

 

 

プラグ内での接続時に金属部が露出しないように伸縮チューブを被せておきます。アコースティックリバイブのカーボンシースも被覆全体に被せました。安いアイテムでは無いのですが、効果の高いオプションですね。

 

 

中村製作所のアモルメットコアも通します。今回お預かりのケーブルは大変径が太い物ですので、内径16φのNS-295 / 8,580円税込を用います。機材に繋いで暫く音出し確認もしてから出荷です。
後日お客様から、とてもいい音になったと少々驚かれたご様子の報告を頂戴し、私の仕事に信用を頂けたのか、同時に今迄の疑念を解決すべく、今手元にある件の方が作成せしケーブルを全て預かり手直しする運びとなりました。それがまた凄いの何ので、詳細は折りを見てまた後日機会があれば・・・

今回の作業の紹介でお伝えしたかったのは、決してこの手の物への自作を否定する見地からのもではなく、それ自体に興味を持ち愉しめる方には、是非積極的に臨んで頂きたいと思います。ただ、今回の事例に限らず、今まで私が預かり手直しした自作系ケーブルはほぼ全て、立派な部材を揃えながらも粗末な工具で作成されたと思う姿と未熟な技術、電源ケーブル作成と言う危険性の存在の想像力の欠如と言った塩梅の物が大概でした。是非ともそれら作成に当たっては、数多目移りするアクセサリーブランドの高価で立派なプラグや線材の嗜好や選択に思いを馳せる前に、十分な道工具類の準備と、自らの観察力と技量と慎重さを推し測った上で臨んで頂きたいと思うの次第なのです。ましてやそれが友人知人の為への作成なら尚更だと思います。

 

友人知人自分製の自作ケーブルが怪しく感じたら一度ご相談下さいね、メーカー製ケーブルでさえ、内部接続の手直しでその音質が大幅に改善する場合もありますのですよ、残念ながら・・・→0466-20-5223