皆さん今晩は

本日のお仕事は、1970年代、ベルリンの壁もまだ健在なりし西独時代のELACが出していたスピーカーで、あまり日本では紹介されて来なかったであろう珍しいモデルの改良受付です。
と言ってもスピーカーケーブルを交換するだけなのですが、それが思いの外大変な作業となってしまい、当初この話をお客様から頂いた際に

『あ、いいっすよ』

と、気軽に受けた自分の見立ての甘さを少々反省しながらの作業です。

 

 

洋の東西を問わず、この時期のスピーカーはかなりの割合でスピーカー本体からひょろりと細い線が直出しになっていたのを覚えている方も居られる事でしょう。交換式でもちっちゃな孔の空いたパッチン式だったり、螺子が露出した巻き付けタイプだったりと、どの道現代のオーディオ製品によくある太いスピーカーケーブルなぞ影も形も無い時代ですので、コレでも当時は十分楽しめたのですよね。
更に言えば、こういった古いスピーカーもエッジさえ生きてれば、十分今でも愉しめる訳で、その音色もなかなかの味わいがある訳ですが、流石に現代の機材に繋ぐとなると些か問題が無い訳でもなく、例えば今回のこのELACの古いスピーカーに直付けされた線は、接続機械側の端末がDINタイプの二極端子が付いているのです。恐らく当時ペアとなるアンプには専用の口が備わっていたのでしょうが、その他の機材の為に繋ぐ際には変換プラグを用意されていた様で、今回はその煩わしさと、幾らなんでも古くて細くてヨレて来ているこの線を少々新しい物に変えてみましょうと言うお客様の御趣旨の下での作業です。
先程記したように、このスピーカーにはスピーカーターミナル等と言う物は存在しませんので、真鍮製のマイナス螺子を全部回して裏面の板外して中に収まるユニットに直接アプローチしなければなりません。すっかりボロケたスポンジ類を整理して、ユニットやコンデンサ類に負担が掛からない様にヒートクリップで熱を逃がしながら、手早く元の線の半田を溶いて取り外しに掛かろうとしたら、ユニットフレームに直付けされた端子板の鳩目鋲がすっかり劣化していて、軽く触っただけでポロリと外れる。おりょりょともう一方も試すとコチラもポロリ、おいおいおい。このままでも結線は出来るけどなんかの加減で動いてどこか触ったりするとビビり音が出るので、2mmの螺子を持ち出して狭い所に指を差しこんでの端子のプレートの付け直しを始めたりと、すっかり手間取ってしまいました。

 

 

写真の灰色の線が取り外したオリジナルで、白い方が今回新たに装着した英国QEDのXTCです。機器側にはお馴染AIRLOCを施してありますので、接続接触面に於いてはアンプ出力側から一気にユニットへ直結な訳ですね、なんだか気持ちがいいですね。また、今回のケーブルは元の線に比べれば当然ながら線径が増して(恐らく同じくらい細いオーディオグレードの線を探すのが現代ではかえって難しそうですね・・・)いますので、背面のケーブルを通す孔も彫刻刀や鑢でもって拡張してあります。

 

 

こう言うのをオリジナルへの冒涜と捉え一切違う線の使用を認めない向きの方もおられますが、要は遊びです。今回は背面にスピーカーターミナルを取り付けたり回路自体に手を入れた訳でもないので改造と言う程でもなく、同じ作業の繰り返しでいつでもオリジナルの線にも戻せますから、聴いてみてやっぱり合わないなと感じたらいつでもオリジナルの線に戻せます。

皆様もちょっと古くてみすぼらしいけど味はあるよなって感じた、こう言ったタイプの古いスピーカー、昭和40年代のシスコンに多いのですが、お持ちでしたらご相談下さいな。但し、不必要にお金を掛ける話でもないので、スピーカーユニットのエッジが健在である物に限りますね・・・
全部ではないですが、ケーブルの脱着が行えるようにスピーカーターミナルを据える事も勿論出来ますよ。

ケーブルを替え終わったスピーカーをテストがてら聴いていたら、たまたま立ち寄られた別のお客様の掛けたチェンバロのCDが、最近ではあまり見掛けなくなったペーパーコーンの風合いも含めて、実に味わい深い音で奏でられていました。個人的にはとても良い仕事が出来たなと感じている所で、後はご依頼主の感想が楽しみな所であります。

 

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