往年の銘アームSAEC WE-407/23が、数十年の雌伏の時を経て昨年春(2019/3)にWE-4700として蘇ったのは、ここ数年のアナログ復興を象徴する出来事として深く印象に残りましたね。
時を同じくしてテクニクスからもSP-10Mk2を範とするモデルが登場し、国産ユニバーサルアームのある種の究極形と、国産DD型タンテーブルの代表最右翼が再び舞台で揃い踏みとなれば、40数年前がそうで有った様に、今回も当然その両者を組み合わせたいなと考える究極を臨まれる気持ちは、オーディオ好きとしては必然であり人情でありましょう。
ところが、この今回の新鋭両者が登場時より仲良くタッグを組めたかと言うと、これが驚くくらい関係が希薄で、空振りした時の田淵(阪神→西武)のバットとボールの距離くらい関係が無い物でした(←分かりにくい?ごめんなさい)
ともあれ優秀なモーターも優秀なアームも、常に双方求めあっての相互関係、相互補完に於いて初めてその真価が発揮できると言うのに、この一般論的意味合いでの夢の組み合わせが公式には行えない状態で、テクニクスのHPに於ける各種ブランド対応アームベースのリストを眺めても、なんだか見当違いな印象を否めない物でした。要するにSP10Mk2の頃当時に、最も組み合わせ連帯率の高かったSAECやFR、旧タイプのSME等の対応に関しては一切触れられておりません。勿論SMEは現代製品も過去製品も必要とする長円の穴は共通、FRに関してはIKEDAと共用可の一言さへ脇にでも添えられていないその姿勢には、果たして彼ら(パナソニック様テクニクス事業部)がいったい誰に対してこの趣味性の高い高額な製品を訴求したいのか、甚だ疑問を覚える次第ですね。
勿論40年前も今回もテクニクスにだって自社製アームは存在しその組み合わせを推奨してはいましたが、タンテーブルと言う物は本来、自由なアームとの組み合わせが約束されたものでないと面白い訳が無いですよね。その両者、製品間にもメーカー間にも主従関係や上下関係等は存在せず協調関係があるのみであって、オーディオを個人個人が愉しむ為の選択の自由の確保があるのみです、要するに。
で、つまりテクニクスは今回、自社製品に対しての対応アームリストにSAECを入れませんでした。部外者の私にはその理由は知る由も御座いませんが、実の所知りたくもありません、どうせくだらない理由です。私としましては正直そんな事はどうでもよくって、お客様がそう望む限りは、メーカーの大人の都合など関係なく、その組み合わせを実現してあげたいだけなのです。
今回漸く、テクニクスには袖にされた形のSAEC側から、自社アームをこのテクニクスSL-1000Rに搭載する為の専用ベースが登場致しました。
SAB-1000Rといいます、税別定価150,000円。アーム等設置調整費用別。

 

 

 

松下パナソニックから比べれば、遥かに小規模なSAECさんの企業規模でのこういう製品開発は大変だったと思いますが、よくぞ頑張られたと思います。そしてその彼らの案内が奮っているのですが、ここには明確に

『*ご注意:SAB-1000Rを取り付けるためにはSL-1000Rからターンテーブルを取り外す必要がありますので、取り付けはオーディオ専門店にご依頼下さい。本製品はオーディオ専門店のみで販売致します』

と記されています。いいですねぇ、こういう姿勢。オーディオ専門店でんき堂スクェアとしても、SAECさんのこう言った姿勢を全力で応援していきたいと思います、WE-4700の新規購入でも既存のWE407/23の据え替えでも喜んで。
でんき堂は、テクニクス製品の取り扱いは残念ながら主に彼らの都合で御座いませんが、オーディオを愛する立場での、一本でも多くSAECのアームをテクニクスに植えてあげたいという気持ちに偽りは御座いませんよ。

最後に、先程田淵の空振りと訳のわからん事を書きましたが、逆に言うと芯に当たった時の田淵のホームランは、飛距離の長い綺麗な放物弾道でバックスクリーンへ飛びこむ、見ていて大変気持ちの良い物でした。
要するにテクニクスとSAEC、この両者の組み合わせ、40年前当時もそうであった様に、当たれば最高の性能を魅せます。

 

余所様で購ったテクニクスで一向に構いませんので、SAECのアームの御用命の際は一度でんき堂にも一声ご相談下さいね→0466-20-5223