米国拠点で活動するケーブルブランドのWireWorld社、ノンカラーレーションを標榜した製品作りに定評がありますね。完成版としての製品が主流ですが、ケーブルの切り売りも勿論扱えます。ところがこのケーブルは同社が追求する独自の製法故に、一般的な他社製品とはその構造が大きく異なり、あくまで私個人の感想ですが、この非常に優れた考え方と構造のスピーカーケーブルの能力を、自力で端末処理して享受するのは相当な技量と労力を要すだろうなと言う事です。何度かお客様個人での端末処理例を見掛けたことがありますが、正直言って気の毒な姿でした。

 

 

こちらのイラストを参考頂きたいのですが、きし麺みたいな平たい被覆に平行に線材が二本づつ四組計8本組まれ、それを積み上げる様に4本並べてシールドされています。この構造は大変秀逸なのですが、カッターナイフ程度で取り組もうとするとまず綺麗に剥く事は叶いません。撚り線構造でもなく一本当たりの線も太くはないので、扱いを間違うと線材が切れてしまいます。
例えば図のSOS8をシングルワイヤとして組む場合は、プラス用に上段赤8本+最下段赤8本、マイナス用に中上段黒8本+中下段黒8本に組みあわせて各16本づつ撚り合わせます。また、8本づつ纏めて4端子としてのバイワイヤ用ケーブルも作れます。
丸断面を持つケーブルなら同じ本数を有していてもまだ扱い易いのですが、この平行断面の場合、剥くのも難しいのですが剥いた後に各線の長さを揃えて組むのがかなり技量を求められますね。
今回はお客様の指定に於いて、この特性を活かしてシングル-バイワイヤケーブルとスーパーツイーター用のシングルワイヤーケーブルを毎度お馴染のQED AIRLOC処理で作成です。端末数で言うと20箇所、結構な処理工程数ですね。

トップの写真は全ての作業が終わった姿です、綺麗に上がってると自負していますが如何でしょう?

WireWorldのスピーカーケーブルは同社自身が自らそう言っている様に、色付けの少ない切れ味の良い解像力とスピード感を有した大変良いケーブルですので、皆様にも広くお勧めしたいのですが、先に述べた様に個人での処理自体には少々どころではない苦労が伴うと想像出来ます、故にここは是非QED AIRLOC共々でんき堂に作成をご依頼下さいませ。
それでも尚自力で剥いて見たい方の為に、それに相応しい工具を紹介させて頂きますね ↓

 

https://www.lobtex.co.jp/products/tabid/140/pdid/LS/catid/37/Default.aspx

平たい構造のWireWorldに最適なロブスター社のワイヤーストリッパーです。工具の充実したホームセンターで入手出来るとは思いますが、5,000円はすると思います。その上で一般的なスピーカーケーブルにはあまり適しては居ません、SOS8を一回作成する為だけに購入するのはちょっと躊躇するかもしれませんね・・・

先日ここに記しました様に、店頭で実際に端末処理したスピーカーケーブルを導入までの扱い易さの観点で暫時掲載して行きます。表現基準としては

五段階表記で
技術的難易度を易しい方から順に、  A→B→C→D→E 
作業工程や所要時間を少ない方から、 
1→2→3→4→5

と、まず決めまして、例えば一般論的に最も扱いが簡単なA-1がホームセンターなどで買える100円/m程度の二芯平行線だとします。カッターナイフだけでも対応可能としておきましょう。更に、アルファベットや数字に ’ (ダッシュ)や+(プラス)を難易度に応じて付記する場合もあります。
因みにE-5は事実上一般個人レベルではやめておいた方が良いと思われるレベル、或いは出来たとしても、工具などの投資費用と所要時間で、それを趣味としない限りは費用対効果が得難く、処理はプロに任せた方が良いと理解下さい、と言う事にしておきましょうか。
因みに、最も当店でも市場でも人気の高いと思われるzonotone 6NSP-Granster2200αは現時点でC-3に分類しておきます。

その上で今回のWireWorld SOS8は、C’-3+と致します。
尚、先に挙げた工具を入手された場合はB-3くらいになりますかねぇ…

 

そう言えば20年近く前に秋葉原の老舗にいた頃に、あまり技量が高いとは思えない店員がお客に頼まれてぎこちない手つきで、キンバーケーブルのやたらと線を編んで組んだケーブル(これも難易度高いケーブルでした)を、100円ショップレベルのカッターナイフでいじいじと縮れた姿に剥いて居た姿を、そりゃねぇだろうと横目に眺めていた事を思い出しました。
その彼は私より一つ二つ若いのですが、入社が先と言う理由で威張り腐ったりメーカーが派遣したヘルパーの売り上げも自分の伝票として会社に評価されてた様な奴で、恐らく彼より技量が高いと思われる私に対してもプライドが高過ぎたのか素直になれず、あまりの彼の剥くケーブルの惨状を見かねた私からのアシストの申し出も頑として受け付けてくれませんでした。お客様も気の毒でしたね・・・

 

スピーカーケーブルを綺麗に仕上げて繋ぎましょう→0466-20-5223