写真はオンキョーが21年前に発売したプリメインアンプで、A-927と言う、同社の資本が変わる頃のほぼ最後の系譜にあたる製品です。
この頃には既に長きに亘って繰り広げられてきたサンスイ607シリーズとの激戦も、企業としてのサンスイが力尽きかけほぼ終息期を迎え、それまでこのクラスに於いては5番手6番手、或いはそれ以下だったDENONが、何しろ他にもソニー、パイオニア、ビクター、テクニクス、ケンウッド、ヤマハ等がこのクラスにひしめいていたので、CDプレーヤーでは人気が高くもこのクラスのプリメインアンプでは、決して目立つ存在では無かったデンオンが、サンスイを潰せとばかりに暴力的迄に物量を投入したPMA2000でもって殴り込みを掛け、一気に10万円近辺のプリメインアンプの勢力図を大きく塗り替えたのと同時に、多くのブランドがこのクラスから撤退撤収した時期でもありました。
ベストバイの様な誌面上では常に1位2位を分け合って居たサンスイとオンキョーのこのクラスでしたが、サンスイがNRAシリーズで痛恨のミス(良いアンプでしたが店頭評価を今までの様には得にくい仕様と音でしたね、要するに繊細でした)をやらかし、常にサンスイを横目に見たアンプを(音的にはなんの関係も無かったですが)市場に投入してきたオンキョーも、ライバルの退潮と共に新勢力として台頭したPMA2000に徐々に市場から駆逐され始めました。
要するに新人が台頭し主役が入れ替わった時期に、かつての主役が脇役としてまだ僅かばかりの存在感を放って居た様な時期にあたるモデルがこのA-927です。非常に手間とお金の掛かった、バブル崩壊後のオーディオ製品としてはこの辺りが最後の贅沢だったなと思わせる作りの良さは、今回お客様の依頼を受けての全体クリーンアップ作業に於いても、補助的役割を果たす細やかなノブ類、パーツ等にも一つ一つ丁寧な筋掘りが施されていたりしているのを手にするに、現在の相当な高級機でもココまでは奢ってないなと思える造りの良さを感じます。
そんなアンプも早20年以上が経過し、お客様方の手元に壊れずに残っていてもそれ相応にヤレて来ています。機械的な故障は無さそうですが、同じクラスを現在の市場で求めようにももう流石に10万円では無理でしょう。そこでこの時期の製品でまだ壊れずに音が出せている方は、ココで一度徹底して磨きを入れる事をお勧め致します。
今回お店では錆びクモリ状態の各端子を徹底して磨いて、キャビネットも開けて内部に積層された長年の埃を吹き飛ばしフロントパネルもボディも磨きだしました。電気的補修や加工は今回しておりませんが、多少出ていたボリュームとセレクターのガリは徹底して活性化してほぼ消えました。傷を除けば購入した頃の輝きを取り戻しています。不思議ですが磨き上げたオーディオ機材は良い音がする物です。
音出し確認ついでに、本日入荷したばかりのラックス監修の音楽の友社発行ムック付録の真空管バッファーアンプを早速組み立てて、この時期のアンプには当然の様に付いていたTAPE入出力端子を介して接続し、スマートフォンで受信するデジタル音源を試聴です。
2世代前のアンプを綺麗にして、もっと前の技術の真空管で最新のデジタル機材の音を聴きやすく整えて愉しむ、ちょっと面白くはありませんか?今回の様な修理を伴わない作業は凡そ6,000円くらいから状況に応じてお受け出来ますので、皆様も一度手元の古くなった機材見直して、ご自身で丁寧に磨き上げるか、私達の様な存在に相談してみて下さい。
何となく古ぼけて見えた機材も、この頃の製品はともかく素性が良いだけにこうして磨き上げると、現代の製品群から滲み出る、どこかコスト管理や効率と言った企業の建前が見え隠れする製品にはない豪勢さが再び輝きを見せて来て、改めて聞くその音と併せて、再び機材への愛着もオーデイオや音楽への情熱も湧くのかも知れませんね。並行してこういった機会に、スピーカーケーブルの端末加工等接続面へにも手を入れて設置状況も見直し、機材は変わらずとも以前より良い音を出して見ましょう。個人的には往年の機械式カメラやキャブ車に手を入れて往時の輝きを取り戻すのを体感するのが大好きです、オーディオもまた然り。

 

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