すっかりお馴染みのと自分で言ってりゃ世話ありませんが、今やすっかり稀少な在庫となってしまったDENON DL103を、遠方のお客様からのご依頼ででんき堂スクェアオリジナルにして好評のアルミボディ化です。またかと思われた方には申し訳ないので、今日はちょっぴり手の内を明かしますね。

 

 

まずですね、このアルミボディ化の依頼が入ったら、この作業が必要と分かって居る日は、出社前から私はあまり右手を重い物持ったりしない様に気を付けて、出来るだけ他の仕事は後に回して精神的にも安定を図ります。大袈裟に感じるかも知れませんが、この作業は一瞬で全てがパーになるし、カートリッジ分解中はくしゃみで逝く場所もあるし、疲れ等で手先が震えるのも困るんですよね。それなもんでかなり慎重に取り組みます。
この針が生産が全く追いついていない昨今、散々待たせて漸く入った貴重なDL103の内容を確認をします。本来はこの針が業務用途だった証に、今時珍しいいデータシートが添付されてきます。今コレ付く針は滅多にないですね。検印者は最近すっかりお馴染みの根本さん、皆さんも手元のデータシートの検印眺めてみましょう。問題無さそげならば呼吸を整えて作業開始です。

 

 

で、こちらが元の側を剥ぎ終わった姿です、あんまり見た事無いでしょう。どうやるかは秘密です、一番難しく神経使う部分なので。良い子は決して真似しないで下さい。内部に連なるリードチップの半田された部分から、見えるか見えないかの蚕の糸程度の線が分かりますか?ここ無造作に触れると一発アウトです。因みにDL103には誰にも知られずに前期型、後期改良型が存在します。外見の仕上がりでの話も散見しますが、私はこの状態で一目瞭然の箇所を抑えてあります。今日の針は新品なので勿論後期型です。前記型と何が違うかは具体的には触れませんが、主に生産時に、生産者毎の技術的技量差が生じにくい様にガイドが追加されたのが後期型です。所が現在のDENONではその旨は一切関知しておらず、先日正式にこの針の内部変更がいつ行われたか問い合わせを出したのですが、白河の工場に現生産設備が移転して以来一切の変更は無いの一点張りでした。恐らくその答えに間違いは無いでしょうし、それ以前を知る関係者等も最早現役では残って居ません。また、DL103Rに関しても、有る時点から内部の一点にほんの僅かにですが、オリジナル103には存在しない泣き殺し対策が施されるようになって居ます、まぁこんな事知らなくても全然問題無いのですがね、私の様に何十個何百と103系列バラしていけばいつかは分かります。

 

 

こちらがアルミボディを換装終えたところです。隣が元の側です。コチラも作業手順は秘密ですが、ただ填めるだけだと思って取りかかると、針が即断します。角度や手先の扱いに相当な慎重さが求められる瞬間です。
新たなボディはオリジナルと寸分違わぬサイズでアルミブロックから削り出しです。お金掛かるんですよ、コレ本当に。こんな作業少量で受けて下さる加工業者さんだって滅多にいません。

 

 

お客様指定のシェルに取り付け終えたらアームに据えてバランス取ってLP半面音出し確認です、今日は本屋で購ったラバーソウル。普段知ってる103では到底得られない低音の押出しと高域に渡って得られる解像感が店内響き渡ります。人によっては丸針に対する印象を改める瞬間です。それから案外多いのですが、お客様のシェルを預かるとリード線の付け間違いをちょくちょく目にします。グレースの特定のアームで無い限りは全て間違いなので直しておきます。

 

 

最後にいつもの顕微鏡確認です、接眼レンズで覗いている状態では30倍です。無垢ダイヤが綺麗ですね、カンチレバー裏側の接着剤も少なめの結構仕上がりの綺麗な個体です、コレは。
お客様への出荷前に最終の針先確認をして、先程の音出し確認で針先が汚れて居たら磨きます。お客様もこの写真添えて手元に届いたら嬉しくはないですか?全ての作業を終えて安全な梱包を施したらお終いです。この作業は一日三個までと決めています。正直言って物凄い神経を消耗するのです。勿論他の仕事を一切しなければもっと沢山受けられますが、そうも行きません。

全部をお話は出来ていないですが、アルミボディ化の料金が、部材費、作業工賃、セットアップ費用込みで32,400円税込みと言うのは、決して高くないなと少しでも皆様に伝われば幸いですね。尚、元の側はお客様へお返し致します、将来の針交換時にこのアルミボディーをDENONへ供出する訳には行きませんからね。再び私の手元に折れた針共々戻して頂ければ、元の姿に戻してメーカーに差し出して、アルミボディは再び新規DL103へ装着できる訳です。

 

まだアルミボディ未経験の方、お早めに→0466-20-5223