さてこの写真は何でしょうか?態度の悪い生意気な取引先の条件にブチ切れたオーディオ店店主が頭来てケーブル切り刻んだのでしょうか?流石に違いますね、それにその場合に切り刻んでやりたいのはケーブルじゃないし。
今日のお仕事は毎度お馴染みQEDのAIRLOC、相手も頻出するZonotone、ここを読んで下さっている方々には毎度お馴染みで何か目新しいのかと思いますよね、皆さん。
今完成したそのケーブルを閉店後の深夜の店内で一人、納品前の最終確認とエージング兼ねて音出し確認しながらコレを書いています。コレが本当に凄いと言うか怖い、薄気味悪い。今PCのキーボードをぎこちない指先でポチポチ叩いている私の背中越しに、ローテルのアンプに組んだPMCのブックシェルフがこのケーブルを噛んでますが、その音が怖い、恐ろしい。さっきから首筋に何かが吹きかけてくる、背中に何かの存在を感じる、背骨にベースが直に振動を伝えてくる、脳内に直接歌声が飛び込んでくる。鼓膜が振動を感じて脳内で立体処理を行う前に皮膚感覚で先に音楽が体に伝わって来てしまう、何なんだ一体これは。
度々振り向いては、あぁ確かにスピーカーが鳴って居ると安堵しつつもどうにも実体化した音が形を伴って背後に立っている様で怖い、音が良いとかそういった感情より先に恐怖感が立つ、久しぶりの感覚ですね。本当よ、この感覚。
ケーブルはZonotoneの6NSP-4400Miester、最近5500aGransterにモデルチェンジされましたがそれまでの人気ケーブルで四芯構造、この一本でバイワイヤまで担当できる優れたケーブルですね。コチラを二本づつ纏めて使う贅沢な用い方も出来ます。 二本づつ纏めて使って、更にそれを倍使ってのバイワイヤ接続と言う手法も相当な効果が期待出来、この場合2mペアを得る為に8m分のケーブルを使うと言うナカナカの贅沢仕様で、店頭でも比較的多く承る仕様です。しかし今日のはもっと凄い、4芯を一纏めとして扱い、左高域プラス、もう一本も4芯一纏めで左高域マイナス、更に4芯一纏めで低域プラス、続けて4芯・・・・・と続いて計8本、本来4芯のコチラのケーブルなら2mペア4m用いればバイワイヤ接続が適うのに、通常の4倍の出費で総計16m分を用いてのバイワイヤ接続です。その壮観さは写真でもお分かり頂けるかと思います。

 

 

この考え方自体が新しい訳では有りません、ナノテックの高価な完成ケーブル等にもこの考え方で組まれたケーブルは存在しています。ただ実際にその自作するなら剥き作業だけでも外皮16回に内芯64回剥いての壮大な手間暇技量に気力、或いは完成版として手にする際のあまりの費用に、なかなか実行する方は居ないのです。
所が今回コチラのケーブルをAIRLOC処理依頼で持ち込まれたお客様は、果敢にそれに挑戦された訳です。さぞ大変だった事でしょう、価格もそうですが組み上げるまでの労力も。キチンとメーカー純正の大変高価なバナナプラグも16個奢られて。だのにお客様どこか一つ御納得がいって無かったとのこと、即ち、作って居る際から感じられていたそうですが、4芯のケーブルを一纏めにするという事は、細い銅線が何十本も束になった状態で非常に太く撚れている事になります。(今胃を握られて怖くなって後ろ見たらジョンが顔傾けてマイク舐める様な位置で謳っていた)どんなに力んでも均等なスパイラルは作れません。それを専用とは言え大口径のバナナプラグで飲み込みイモ螺子で閉め込んだだけで、この100本は越しそうな線材一本一本全てに均等な信号が伝達されているのだろうか、中には完全に遊線化してしまったり、弄れて縮れて信号が迷走する様な状態になってはいないだろうか、でもこの形状のプラグでこれ以上の留め方はどうしても思いつかない、しかし音はもう少し何とかなるのでは、そんな思いで居られた所、たまたまでんき堂スクェアを見つけ、QEDの存在を認識されたとの事。その構造を聞くに自分が考えて居たのは正にそこであると手を打たれ、(今ゾクッと来て鳥肌立って思わず振り向いたら、ポールがバイオリンベース手に謳ってました)早速AIRLOCの依頼、16箇所、全端末全箇所剥き直しの上でケーブル再構築です。それで冒頭の写真です。銅線の切れっぱしは私が失敗したのではなくて、今までバナナプラグ噛んでいた部分の15mm程度のみを切り落とした部分です。外皮が16本、内芯が64本、更にシールドの箔やドレインの木綿糸の切れ端です。総作業時間が2時間15分でした。分かりやすい様に伸縮チューブも左右上下色分けして奢ってあります。

 

 

スピーカーに挿さっている姿、アンプに挿さって居る姿、全く壮観ではありませんか。(今ジョージのつま弾くシタールが脳内を支配した、うわぁ~)漸く出来あがったケーブルを適当なシステム用意して試聴して今し方このコメントに連なります。キーボード入力不得手な私が文章ここまで至るのに、ラバーソウルとリボルバーの二枚を消費しました。その間店内は正に万華鏡の如く極彩色の音が私の周りを飛び交っています、ラストのトゥモローネバーノウズに至っては背中越し後ろ向きにシステムがなっているのに、どう聞いても自分の左前から怪しげな音が鳴り響いたりして思わず手を止めてしまいました。
音に敏感であったり優れた才能を有す方々の中には、音に色を感じたり味覚を刺激される感覚を覚える事があるそうです。私は決してそういう物には手を出したりしませんが、1960年代の中後期サイケデリックムーブメント、スゥインギングロンドン、ドラッグカルチャーが支配した頃のポップシーンでは、LSD等によって幻覚症状を見た彼ら彼女らは、音が目の前で実体化したペイズリー模様柄が生まれては消えて形を変えながら脳内を眼前を夢と現実の狭間の様な感覚と時間軸を超えて飛び交ったのだそうです。流石にそこまでは感じませんが、さっきからその手前の感覚が私を支配しています、或いは疲れているだけだったりして(笑)
ドラッグなどは決して手を出すべき物でないと私でさえ思いますが、そんな物手を出さずともある一定の水準に達したオーディオ環境下で一種の陶酔下に近づけるのだとしたら、それはそれで恐ろしくもあり覗いてみたくもある経験では有りませんか?コチラなら安心して喜んでお勧め致します。何故ならどんなに手に汗握る恐怖を覚える様な音世界が実現した所で、オーディオ装置が皆様の精神や身体を蝕む事だけは決して有りませんから。強いて言えば、少々懐にはキビシィ~かも知れませんがね。

 

 

尚、文章中に、これを書きながら背後で流れていたサウンドに対して都度聴きながら感じた率直な感想が書き込まれていますが、決しておかしなクスリなどやって居る訳ではない事を重ねてお断り致します、或いは感覚がおかしいだけなのかは自分でも分かりませんが・・・
ナカナカ得難い体験をさせてくれるケーブルが組み上がった物です、せっかくだからこのままペッパー軍曹もきいちゃおっと、おぉっ、ダイヤの目をしたルーシーが飛んでいるぅ~

 

4芯ケーブル贅沢に4倍使ってAIRLOCして僕も私もブッ飛びたい→0466-20-5223