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先日、お客様より引き取らさせて頂いたオーディオ機材諸々の中に、小柳出電気の初代OCB-1が混ざっていました。下の写真の真ん中のですね、いや懐かしい。

もう何十年前ですかね、電源で音が変わるなんて言っても全く相手にされない時代にこれを製品化した小柳出電気の先見の明は素晴らしい物でした。
今でこそ電源プラグ一つとってもオーディオ用に特化された様々な製品が、選択に苦労する位の種類があり、何が何だか全くの状況ですが、今ほどオーディオアクセサリーが重要視されていなかった時代でもあり、初代OCB-1は当時ホームセンター等という存在も無い時代に、所謂電材屋さんで手に入るごく一般の電気部品で構成されていました。
三列配置のコンセントに時代を感じますね。私が初めて手にしたOCB-1は、松下電工のJISタイプホスピタルグレードのWN1318が採用された二代目でしたが、これでさえまだオーディオ用パワータップという言葉があったかなかったかの30年近く前に、当時のステレオ誌でその存在を知り、どうも電源タップと言う物を使うと音が良くなるという事らしい、その魔法の箱を秋葉原の小柳出電気という所が扱っているという、それだけの拙い情報を頼りにネットも無い時代に、電車乗り継いで総武線のガードの下の小柳出電気に地図を頼りに恐々と出掛けました。
すっかり様相の変わってしまった今の秋葉原と違い、当時はどこもかしこも部品屋さんみたいな店頭ばかりが並んでいて、そのどこもが賑わっていましたが、その中でも一際異彩を放つ小柳出電気の、電車が行き交い喧しいガードの下の店頭で、ケーブルなり部品なり良く分からない物がうずたかく積まれた狭い店内に、右も左も分からない田舎者が「あのぉ~、雑誌に出ていたOCB-1って電源タップってのが欲しいんですけどぉ」とただでさえ狭い店内にやたらと人が出入りしている環境で、明らかに場違いな感じの素人っぽい学生が(つまり私)、灰皿があちこちに常設された店内で、煙草片手に「あんた、何欲しいの?」なんて聞いてくるオヤジさん相手に、目指す商品に辿り着き目的を遂げるまでの恐怖の体験は、今でも鮮やかに思い浮かびます。
久しぶりに手にした初代OCB-1はそんな古の記憶を呼び起こしてくれましたが、改めて眺めると懐かしくもあり、また、随所に時間の経過を感じる事も否めません。
当時はこれを持っているだけでも大将だった物ですが、世の中も小柳出電気も色んな意味ですっかり変わってしまいました、良くも悪くも。道理で私もすっかり歳を取る訳です。

今回は、そんな先駆者としての小柳出電気のタップに敬意を表し、構成としては良く出来ているこのタップを現代のオーディオ基準で手直ししてみました。彼らが当時基準としていたケーブルは両端を処理し直す事にとどめ、ULタイプのフルテックのコンセント FPXを金メッキ、ロジウムメッキの物をそれぞれ配し、聴き比べタイプの電源タップにレストアです。壁側の電源プラグもホスピタルグレードに交換です。当時は考えもしませんでしたが、改めて見るとコレ屋外用の防水型プラグですものネ。それでも普通の電源プラグより遥かに立派に見えた物です。
電線は切りなおした上で端末処理をし直し、内部も同じくコンセント自体は交換だけの話なので本体を改造の必要はありません。また、プレートがULタイプの2連装が必要になるので、こちらもフルテックの102-2Dに付け替えます。ネジ穴位置その他に変更は無いので便利ですネ。
今回、部材だけで20,000円近く使った形になるので、あと少しお金を払ってしまえば十分立派なオーディオ用パワータップが買えるかもしれませんが、グレード的にはもう少々お金の掛かっているタップが採用しているコンセントですので、結果として得られる音質改善の効果は、僅かながらでも、自分が手を下した何かという満足感も含めて、既成の品で得られる物以上かもしれません。工作等お好きな方には大して難しい問題でも無いでしょうし、ついでにBOX内に鉛シートを張る様な防振やシールド対策処理を施してみたり、屑水晶を流し込んでみたり、PVCボディの加工し易さを利用して、スパイクを打ってみたり、底面に同サイズの厚手の様々な板材を張り合わせての強化等夢は広がるはずです。

私自身オーディオを始めて30年近い歳月を経て、お陰様で色々と覚えさして頂け、多少経験も積めましたが、初めて電源で音が変わると言う事を教えてくれたこのOCB-1に対して、初心に帰る気持ちも含め、以後色々なパワータップや電源を手に入れてはきましたが、最初に自分のアルバイト代を貯めて初めて買った電源アクセサリーとしてのこのOCB-1だけは、時代時代の変化に合わせたパーツを奢りながら未だに手元で使っております。
何しろ売れに売れた今となっては伝説に近い製品です、多少のオーディオ的ベテランの方でしたら一度は通った道ではないですか?OCB-1は。恐らく手元に残っている方も多いでしょう、今はすっかり電源にお金を使う事が当たり前になりその変化に慣れてしまい、どこかもう使われず隅に転がっているかもしれません。
今更かもしれませんが、あの初めて電源を変えて音が変わった時の感動した自分を思い返す意味で、今一度手元に転がっているOCB-1を遊び心も含めて見直してみるのも良いかもしれませんね。

コンセントも電線もプレートも選びたい放題です、最低限工具が揃っている方ならば、一時間程度での想い出の追体験です。自分で手を出す事はちょっとと言う方も古いOCB-1を持って店頭に遊びに或いは御相談頂ければ、お使いになりたいコンセント等お選び頂いた上で、幾らかの工賃、そうですね今回の様な作業ですと3,000円から5,000円位で収まると思いますが、お客様の要望や予算に応じて色々出来ると思います。こんなの古いよと言って手放してしまう前に一度考え直してみるのも良いかもしれませんよ。今回お店でコンセントを取り変えた仕様もケーブル自体の変更はしませんでしたが、新しい部材を用いて再び組み直して接続して聴いた音は、当初のそれとは随分と違う物で非常に楽しみがいと得る物が多い作業でした。

 

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