ZET-1-sme

 

ドイツの西寄り、要するに旧西独領内の旧首都ボンの北側25キロに位置するドイツ第四の都市ケルンは、古くはハンザ同盟にも主要メンバーとして名を連ねる歴史ある街で、現代ではカメラの見本市のフォトキナが開催されてる場所としても有名ですね。更に北側35キロにはルール工業地帯圏内に当たるデュッセルドルフがあって、訪れた事は無い国ですが、恐らくこの辺一帯はドイツの主要地帯なのでしょう。
前置きが長くなりましたが、その立地に恵まれたケルンの東北東10キロ程度の位置に存在する、ベルギッシュ グラートバハと言う街に拠点を置くのが、今回紹介するTRANS ROTOR/トランスローター社です。
同社のHPを現地版で覗く限り(ドイツ語で私には内容はサッパリですが・・・)徹底してアナログプレーヤーに特化した物造りに鋼鉄の意思で邁進している事が大変に良く分かるラインナップで、見た事も無いモデルを含め数十種類のアナログプレーヤーが紹介されていて少し驚きます。
どっかの超大型家電メーカーが得意ゲにアナログプレーヤーの復活、再開を吹いてるレベルではない企業規模から考えれば驚愕の揃えっぷりで、ドイツ、いや世界にまだこれだけの高級アナログプレーヤーを必要としている市場が存在する事に大いに感心し、それ以上の高級機も含めまだまだ沢山の高級ブランド、アナログプレーヤーを擁す彼らの懐と奥行きの深さには、日本国内全オーディオブランドのアナログタンテーブルを数えても、このトランスローター一社分のラインナップにも満たない高級アナログプレーヤーの選択肢の貧相さには、少々どころかそれ以上の悔しさと、何社からか二、三台漸く使えるプレーヤーが再登板した程度でアナログブームに沸く我が国のオーディオ熟成度の差を思い知らされます。
何しろ欧州圏随一の経済力とはと言え、東独併合失礼統一後でもドイツ全体で人口が8,100万人(2014年現在)でおまけに東半分は徹底して遅れてしまった経済圏を漸くどうにか出来たばかりの国です。翻って1億2,000万人ですか?我が国の人口は確か。単純な話彼らの1.5倍のオーディオ人口とアナログプレーヤーのラインナップが欲しい所ですが、恐らく先進国中最もアナログプレーヤーの自国製選択肢が低い国でしょう。確かに1970~80年代には世界一のラインナップを誇っていた筈なのですが。
更に言うと、両国のアナログプレーヤーに限っての大きな差と念の為にお断りして話を進めますが、日本のそれが1980年以降は進化を止め今僅かに市場で選べるどれもが、その時代の焼き直しかイメージの再利用にすぎない懐かしさを強調した製品である事及び、搭載されるアームに至っては当時のレベルに追いついてさえいない点であり、トランスローターに限らずドイツ圏内から送り出されるそれらは、アナログプレーヤーとしての進化をCD登場以降も徹底して機械的に機構的に力学的に綿密に精密に追求続けた最新のデザインと性能を有している点です。
要するに彼らはCDが出てもそれはそれとして、メカニカルの極致として、音楽再生手段の極北としてのアナログプレーヤーを追求し研究し続けて来た訳です。
日本では1980年代バブル期それ以前以降、レコードで音楽を聴いている事自体がダサイと見られるような軽薄な風潮のなか、高音質のデジタルと言うほぼ妄言に近い官民挙げた一種の強迫観念に駆られたメーカー消費者双方の経済活動消費行動の結果、当時の国産アナログプレーヤーはアームなど特に世界レベルで結構イイセンいってたはずでしたが、旧い物を徹底し馬鹿にし蔑む風潮の中、重文や名勝に指定されなかった歴史的な風景や建造物ともども価値観も含めてすべてが、新しい物が正しく旧い物は汚いと色分けでそれらと共に見事に消え去りました。
最近では旧い車を目の敵にしたかの様な、燃費だけで全てをエコと結びつけた新車を販売するが為だけの目的での大メーカー優遇の税制等にこの国の異常性が良く現れていますね。
まだ十分走る車をゴミに出して、原住民を傭兵雇って追い払ってアフリカの鉱山切り開いて中国の河を魚も済めないレベルに汚染して世界中の工場に物流行ったり来たりさせて漸く完成する、高周波音まきちらしながら走る電気が補助した自動車が少々排ガスクリーンで燃費がどんだけ良かろうと、そこまでに使った熱エネルギーや環境負荷に関してはまるで問題にされない点等は特に、徹底して旧い車の面倒を見るドイツの各メーカーの姿勢や旧車に税制的優遇策を設ける英国と比べても、どうしようもない意識の立ち遅れを感じます。
話が大上段に構えて申し訳御座いませんが、そのどちらにも良い面悪い面あるでしょうから優劣は論じませんが、一般論で言う所のこの差が国民性でありその結果としての物作りです。
つまりドイツのアナログプレーヤーは彼らにとっては未だ現役の技術であり発展途上であり進展の途にあるので、今後も当分は新製品の声には暇が無い事でしょう。要するに懐かしくもなんともないのです、彼らには。

閑話休題

日本では真空管アンプで実績のあるAIR TIGHTがトランスローターの輸入代理店となっています。流石にその全てを輸入や紹介は出来ないでしょうが、魅力的なモデルが彼の地から数多く入ってきています。
今回お店では、その中でも特に魅力的で求め易いZET-1/M2をAIR TIGHTの協力を得て展示致しました。
末尾のM2はSMEのM2-9搭載を表していて、価格は80万円税別。

 

photo01
おまえ、求め易いって書いて80万円かよって突っ込まれそうですが、アームレスモデルのZET-1が68万円税別です。
SME M2-9は輸入元のハーマンの提示価格が33万円税別です。
それだけでは実際には音は出ませんが(例えば針とか必要ですよね)簡単に足しても税込み109万800円もします。
それがセットで864,000円税込みです。しかもこれはあくまでメーカー標準価格ですから、店頭でもう少々はお値段出せると思います。
大きな慣性力を持つターンテーブルをベルトで滑らかに回すドイツ製のクラフトマンシップにのっとった機材が、英国の誇るSMEアーム搭載でこの価格です、実際には安いと断言して問題無いレベルです。
何故なら国産でこの価格でこのレベルは出せません。もし1982年以降もオーディオメーカー各社が生産を止めずに細々とでも技術を継承し続けながら真面目に作り続けていれば、それはそれで日本なりの優れたモデルがもっと安く作れたはずですが、一度途絶えた技術を人員技術共に再結集して作る大変さは、今市場に並ぶ国産数社のアナログプレーヤーがその姿形と価格をもってして物語っています。
確かに国産プレーヤーの既存の価値観にのっとった姿形では有りませんが、全盛期の国産プレーヤーの雄、マイクロを思い出してみて下さい。40年近く前で彼らは既に別次元の姿かたちを有していました。もしあのまま続いていれば、恐らく今ほど欧州勢のプレーヤーが奇異なものに感じられないぐらいに日本のアナログプレーヤーも進化しただろうなと、容易に想像が付くのではないでしょうか?

 

EL_DL-103_D

 

 

お店ではごく一般的な針としてDENONのDL-103を装着して皆様のお越しをお待ちしています。
是非一度その音を体験に遊びに来て下さいませ。

 

TEL:0466-20-5223 (お問い合わせはこちら)