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20年ほど前に、C.E.C.にはTL5100Zというベルトドライブを特徴としたプレーヤーが存在していました。定価で13万円だったかな。
CDディスクを、スピンドルシャフトにモーター直結やギヤを介して回すのが当たり前と思われていた当時、古のアナログプレーヤーの如きベルトドライブを採用し、ディスク上にかなりの重量のスタビライザーを載せて共に回してしまうという、メカニカル的振動対策を極めてシンプルに実演してみせたモデルで、私なんかはその構造に驚いて音も聞かずに飛びつきました。
ちょうど長岡鉄男氏がそのコストパフォーマンスを褒めちぎった同社のCD2100が市場を席捲していた頃の話で、その上位機種です。
同時にTL5100という、TL5100Zから純粋にDAC部を除いたトランスポートが10万円で存在していて、ペアとなるやはり10万円のDACのDX51との接続は、ペア20万という価格を超越しているようにさえ感じさせられたレベル。
あの時期に20万円クラスの単体CDプレーヤーは、今と違って数多く存在していましたが、セパレート機は皆無。
価格だけでみても、13万、ペア20万円という価格で考えられる限り最良の滑らかさを誇る音楽再現能力だったように覚えています。
それでもこのクラスで一番売れたわけではありません。
どうしてもSONYやパイオニアといった意味での一般レベルでの知名度の比較においてや、その形、即ちベルトドライブ機構を採用したが故のオープントップスタイルからくる設置環境の制約ですね、つまり実質ラック最上段か、かなり高めにとった棚でなければ、トレーが手前にせり出してくる一般的プレーヤーと違って、筐体自体は薄くともディスクの出し入れに難渋する等が購入の妨げになったりしたわけです。
要するに、レコードプレーヤーがのいた、その跡地に収まるようなコンセプトでしたね、使用感覚や狙っている音質も含めて。
結局のところは知る人ぞ知る的感じのまま、玄人好みのブランドの玄人向けな機材然りとした佇まいや存在感通りの売れ行きでした。買った人は皆その能力に大いに喜んでまいしたが。
既にC.E.C.と言うブランド自体が、当時から既に数度に渡って親会社や母体が変わってしまった今となっては、基本的コンセプトや機構を受け継いだままのモデルが継続されている事に全く驚くばかりです。
パイオニアという会社は残ったけど、あの頃のパイオニアの姿勢を引き継いだまともなオーディオ製品は、もはや営業も技術も含めてどこにもないし今後もまずないでしょうけど、C.E.C.ブランドは元の会社は消えたけど当時の良いものと技術は残ったとでも言えば分かっていただけますかね、この気持ち。
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あと当時の、或いは相変わらずなメディアの姿勢なのか、C.E.C.は特定の雑誌では徹底的に褒められたけど、先生連中に価格帯ごとのランク付をつけさせるのを年末にやるのが得意だった分厚い雑誌なんかでは、TL5100ZやCD2100自体がエントリーしてないもんね。試しのその125号の’97-’98ベストバイのCDプレーヤー15万円以下を眺めてみたけど、20位までに13万のTL5100Zも39.800円のCD2100も影も形もないの、変なの。
一部の先生が熱心に、その上位機種のトランスポートのTL1Xを押していたけど、毎年C.E.C.に票入れられていた方、この方だけだったなぁ。
ただでさえ狭い世界で大人の事情だか縄張りだか好き嫌いだかはよく事情知りませんが、ベストバイを謳う場に、どれに票が偏って入るかはともかくとして、エントリー自体に公平に市場で買えるモデルが並ばないような、こんなことやってるからHi-Fiオーディオ業界おかしくなんだよと言っても今更手遅れですが、ともかくそんなこんなで、以降、一部の愛好者に根強い支持を受けつつ、同機構を引き継いだモデルが数世代に渡って作り続けられ、その系譜に連なる最新作がここで紹介するこちら、最新型CD5となります。
念の為に先出の雑誌の昨年末のベストバイを覗いてみたら、括りが20万円未満のデジタルディスクプレーヤーと時代を反映して変わっていましたが、姿勢は変わっていないのか、やはり昨年既に存在した筈の今回のCD5、17万円税別定価ですが、広告出さないからかどうかは知りませんがやっぱり影も形もないですね。
じゃぁこのCD5は駄目なのかというと、そうですね、SACDの対応とブランド知名度と雑誌に払える広告費以外で言えばクラス最強なんじゃないですか?
つまりオーディオ製品、CDプレーヤーとして眺めた場合、恐らくこの価格帯では今後みなさんのお買い物としての最後のCDプレーヤーとしてのベストだと申し上げても問題はないのではないでしょうか。
何故ならもうCD専用機は作られなくなるのは時間の問題です、なにしろメカがこれ以上供給されません。少数しか生産されないオーディオの為だけに今更CD専用メカは作られません。
無論一部超高級メーカーが自社高級機用に買い占めた数百台分や、DVDメカの能力を限定して使うCD専用機は話が別です。
5年後、10年後、純粋な意味でのCD専用機の存在が私には思い浮かべられません。
SACDソフトを分けて考えれば、やはり専用機で聴くCDは大したものですよ。
そしてここからが重要ですが、C.E.C.だって今後CDが難しい状況になっていくことは十分理解しています、PCとWEB環境の進歩は、音楽の試聴スタイルや購入スタイルを大きく変えてしまいましたし、今更その流れに抗える物でもないでしょう。よって今回のこのCD5には、ベルトドライブという滑らかさを狙ったCDプレーヤーとしての基本性能は当然として、それ以上に衆目を引くのがUSB対応のPCM32Bit/384MHz、DSD128対応のDAC搭載です。
実質優秀なUSB-DACとしてこの製品は評価されるべき存在なのかもしれません。そこにCDドライブも搭載しました、みたいな。
ハイレゾ音源が話題の今、PCを介した音楽環境が当然として受け入れられていく段階で、当然その音の肝はDAC如何に関わっていくのですから、既に所有のCDを十二分に良い音で楽しませてくれた上で、これから主流となりそうな音楽信号ほぼすべてをこれ一台で対応してくれそうなこのCD5は、やはりコストパフォーマンスで評価され続けてきたC.E.C.の面目躍如たるものを感じます。
しかも資料をよく読むと、驚いた事にこの価格帯でのバランス回路設計だそうで、この値段帯このスペックで純粋なバランス出力型のCDプレーヤー、或いはUSB-DACってそう滅多になかったとおもます。
決してバランス回路盲信ではありませんが、形だけバランス端子搭載した機材も多い中、この価格帯で細かい指摘をしようがないレベルで機材を組み上げたC.E.C.はやはり隅に置いておくには惜しいブランドです。
最後の最後に、フロントに設けられたヘッドフォン端子の存在が、結果としてこのCD5が超高性能USB-DAC搭載型ヘッドフォンアンプでもある事に気が付かされて、少々驚いている次第でもあります。

 

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追記

以前からベルトドライブプレーヤーに対して、ベルトが切れることを恐れる声がありました。
確かにいつかは切れます。
今までは切れたらメーカーで張り替えていました。
例えば私の使ったTL5100Zは10年使って切れはしませんでしたが、一度別件で整備した際に張り替えて貰いました。
機械なのでいつかは壊れますが、ベルトは取り替えれば済みます。
そして今回のCD5からはメンテナンスフリー化を狙って、ベルト切れ自体はユーザー側で、かつてのアナログプレーヤーの様に自分で行えるようになりました。
相当先にはなるでしょうが、もし不幸にしてベルトが切れたならば、販売店なりメーカーに申し出ていただければベルトを入手頂けることでしょう。

蛇足

以下は全てキーボードの暴走です、予め読まないようにお断りいたしますが、上野駅13番線のトイレを覗く程度の勇気(湘南地区の皆さん!春のダイヤ改正で東海道線が上野駅直行ですゼ!因みに私はそこのトイレは利用しません、念の為・・・)と、ユーモアを解す広い心をお持ちの方は自己責任においてどうぞ。

ついでに言うと、ベルトが切れる心配のない他の家電系大手メーカーのCDプレーヤーは、生産完了後7年経てばメンテナンスを放棄される可能性が大変高く、前期のオーディオ雑誌のベストバイを飾ったほとんどすべての国内大手家電ブランドのC.E.C.より高い順位で評価を得ていたCD機材が、SONYを筆頭に生産メーカー自体からは壊滅的状況というか相手にさえして貰えない現状も、全く余計なお世話とは知りつつつい筆が滑る思いですね。
死なないペットの触れ込みで売り出したはずの犬のおもちゃが、つまんないセンサーの一部故障程度の問題で、生産終了7年経過を盾にSONYからメンテナンス終了の一言で、日本中でびっこ引いてプルプル震えて愛情注いで来た飼い主たちが途方にくれているって話聞いて以来、もう大メーカーのCDプレーヤーとか、36万もしたのに10年で修理断られたそこのヘッドフォンとか、あまりに酷い話ばかりなので買って貰う気が失せました。

そういえば先日高らかに復活謳ったテクニクス?数百万の。
まずは2000年頃に100万円近くお客さんから貰って売り散らかした超高級アンプ、そういうのをちゃんと制作メーカーとして責任もって直してから、そういう信頼ブランド利用した超高級品売りませんか?
今度はシステムで400万?500万?はぁ?ですよ。
生産終了後7年経ったら直せんですか?それ。数百万のオーディオと数万円の白物家電同列ですか?対応。
100万円のオーディオが10数年で壊れてゴミですか?
伝え聞くところによれば、今度のそれは、オーディオ専門店が飾ってくれなかったからトップ会談で付き合いの大きな家電量販の、そのオーディオコーナーに担当者が嫌がったのにねじ込んだだァ?
おまけに販売側もオーディオ買いに来たお客さん相手にフ〇ッツ光の契約とれ?とかのトップ命令?試聴室で。それ売り場違う人の仕事じゃないの?

どこまでお客さん不在でオーディオ扱う気なのですか?あなた達。

因みにSONYが直せないのに千葉で一生懸命にアイボを直してくれる方が元SONYのエンジニアを中心に存在するそうです。
オーディオの方もSONYや松下が放棄したCDプレーヤーやオーディオを、可能な限りメンテナンス受けて下さる方の存在が幾つかあります。
勿論出来ないものは出来ないしお金が掛かるものはかかります。
でも作ったメーカーが責任果たさない以上、一度そういった所に可能性を探ってみるのも、その製品を作ったメーカーが愛していなくても、使われている方が愛しているならば、試してみる価値はあると思います。
それからC.E.C.は7年でばさっとメンテナンス切ったりしないことも書き添えておきますね、以上

おぉ、キーボード今、治りました。あいうえおABCDE、大丈夫、OK、おやすみなさい。