S2-RCA-close-up

NVS(=Nathan Vander Stope)ケーブルは、創設者のある若い音楽家の名前を冠した、そのStope氏の感性に頼った米国製のオーディオケーブル。
製品自体は今時珍しくも貴重な米国製ですが、本人は名前から察するにデンマークあたりの血筋でしょうかね。
精度の高い芯線を異径で束ねて用い、それを特殊金属パウダーで包み込んでテフロンシールド等で巻いていく手法は信号系統への電気的物理的外的影響を徹底して排除する姿勢から生み出された極めて正攻法なもの。ところが正攻法過ぎてあまりに難しい方法なので、線材を金属パウダーでシールドするといった方法は数多のケーブルブランドでも滅多に見かけません。
日本の製品がどちらかというと線材そのものの、例えば7Nや8Nといった数値で表しやすい純度の追求や、被覆のハイテク素材を前面に押し出すきらいが強いのに対して、海外製のケーブルはそのケーブル全体の構造に工夫やアイデアが盛り込まれているのを感じます。このNVSとは全く考え方が違いますが、やはりアメリカのMAGNANケーブル等も最先端の航空産業に関わったノウハウをそのシールド構造に採用していました。
NVSケーブルの全長に亘って金属パウダーが封入されたその製品は持つ手にずしりと重く、コレクトチャックを用いて確実に接続された機器同士の信号を確実に受け渡してくれる期待を音だし前から感じさせてくれます。
試しに今回はNVSとしてはエントリー級にあたるFD RCA Cableをプリ⇒パワー間で使って自分が好んでよく手にするアルバム一枚通しで聞きましたが、縦横に動き回るベースにとんでもない高みから見下ろすヘロヘロのボーカルが漂い、後乗り後合わせのドラムが音楽の教科書を無視したグルーブ感を供し、怪しげに響くシタールが部屋全体を包みました。気分はもうサイケデリック、ペイズリー模様の脳内乱舞、音場の色覚化、目の前で空間が歪んで紫の卵から緑と茶色のとかあんまり書いてると、アイツはラリってるとか言われるかねないのでもうここでやめにしときますが、皆さん黙ってこのケーブル繋いで大いにトリップもとい覚醒してください、けっこうキテますよ、コレ。
少しだけ真面目なこと書き添えると、音楽再生時のバランス的低域の絶対的安定性と伸びきった広域を不愉快な響きに持ち込まない再現性は、数多くの他製品と比しても圧倒的な能力をこのNVSに感じますね。
キンキラキンでズンドコドンの高性能ケーブルに疲れてきた皆様にもそろそろこの手のケーブルの魔性の領域を感じて頂ければ幸いなのですが・・・