model201_1

 

昨今、復活だかブームだか、ともかくアナログにまつわる製品群が一頃より増えたように感じますね。1970年代のオーディオ的第一次ブーム期より製品数は当然減っていますが、高級カテゴリーにおいては、特にMCカートリッジに関しては却って、値段のことさえ言わなければ選択肢は増えている様にさえ見受けられます。
そのどれもが最高の性能と音楽再現性を目指して各社の最良と最善を尽くしての事でしょうから、確かにそこから紡ぎ出される音は凄いんですが、値段もすごいでしょう?中古屋で百円とかで見つけてきたしょうもない程度(盤質の事ですよ)の歌謡曲なんかのLP適当に掛ける針が二十万円三十万円とかちょっとネェ。
あとですね、これは個人的主観ですが、高級MC針って要するに上等なご馳走みたいなもんで、私には縁遠い世界ですが、普段毎日それを食べられる御身分だったとして、普通に定食屋のランチや立ち食いそばだって食べたかったりおいしかったりするんじゃないかと思うわけです。(以前褒めた名古屋駅東海道線一番線のきしめん屋、おばちゃん変わって味落ちたぞ、立ち寄る度にすするの楽しみにしてたのに!)
その意味で音楽に格付けしてこんなのこの程度の針なんかでいいって見下すんじゃなくて、毎日飽きずに食べ続けられる、安くて良質な定食を提供してくれる魅力的な食堂の定番メニュー的な存在の気軽に使える安価なカートリッジってのは、例え相当なオーディオの機材を揃えた遣い手にとってででさえ、金持ちの美食家が毎日毎食フルコースって訳でもないのと同じで、やはりそういった気軽な針もそこから再生される音楽のジャンルに囚われることなく必要だと思うのです。
話飛ぶけどこの音楽を格付けして見下した態度をとるオーディオ屋って本当にいてね、僕が以前いた秋葉原の老舗専門店の店長が露骨にロックはかけちゃイカンとか鼻すすりながら偉そうに命じたりしてたのが懐かしいね、最低の話だけど。
その意味では未だに音楽をジャンルで区切ってそれ向きのオススメのシステムなんて提案しているメディアの責任も深いけどね。
閑話休題、で、その気軽な定食、気軽な針が今回の問題で、以前ならMM級にそういった存在が沢山あったのですが、とにかくアナログブームということになっている現代は、高級品には事欠かないんだけど、いわゆる安くて普通に使えるMMが全然ないんですよね、高級品ばっか、本当に。
これはパイオニアやテクニクスと言った家電系企業のアナログ製品からの撤収の責もさりながら、数が出ないジャンルの宿命というか、最早アナログレコードは70年台とは違って、音楽鑑賞、オーディオ趣味のメインストリームではないので、当然存在自体が趣味性が優先されていて、必需品的存在としての使命を帯びたアナログ針にはあまりお声がかからないというか、安い針は即ち数がその低価格を保証する仕組みの資本主義経済なわけで、絶対的必要数が減少の一途のMMカートリッジはその際たるものな訳です。
よって米国のMMの雄と考えられていたシュアーの現状も要はそれが答えで、元々民生機以上に世界中に存在したジュークボックスや業務用放送機材の頭は圧倒的にシュアーが占めていたのですが、日本のそれよりは英米は多少遅かったのですが、90年代中後半より急速にそれらが姿を消したのと同時に彼らのMMは歩調を合わすように市場から姿を消して行ったのです。因みにピッカリングも似たようなもんですね。
なんとなくシュアーはV15系列がほんの数年前まで販売されていたりしたので、随分長くそれらが市場に出ていたように思う向きもあったでしょうが、あれはとっくに米国(メキシコ)では生産終わってたものを日本での輸入商社が大量に握った在庫を、細く長く販売してただけなんですよね、実のところ。だから販売終了と同時に交換針まで供給停止でどうしてそうなんだよって混乱を来たしたのもつまり、どっちも本国ではとっくに生産供給終わっていて、別に急に止めた訳ではないぞよと言う事でしたね。
さて漸く本題に辿り着いた、つまりなんてことない普通の音出る普通の経済感覚で買えるMMですね。ここでは敢えてテクニカの一連の針には触れません、簡単に言ってしまうとアレは結構個性の立った針で、聴き手を明確に選んだ製品つくりです。
私が言う「なんてことないけどずっと聴いていられる音」とは要するに毎日食べて飽きのこないけどしっかりした味の食事であって、古いこと覚えている方がいればグレースのF-8、特にF-8Lのアレです。
全然派手でないけど大人しいわけでもなく、解像力を誇示せずとも低解像な訳でなく、高域をひけらかさずとも高域が伸びてない訳ではなく、何がいいんだかパッと聞きちっともいいところないのにアルバム一枚聞いてると「しみじみいいねぇ」と思えるあのF-8Lのあの普通に良い感覚です。
しかしもう品川無線さんはオーディオの世界にはおりません、その自社のカートリッジブランドの名を冠したビルにこもって二度とこの業界には関わらない腹つもりの様子です。
だから私達は一万円そこいらで愉しめる普通の針に飢える訳です。
そこに数年前に出てきたのがシェルターのMODEL201です。
高級MCでやはり有名な同社ですが、何年も前に同社主催の小澤社長に何かの雑談中に生意気にも意見したのを思い出します。
「普通な針ってどっか残っちゃいないですかねぇ?」
と。
小澤氏が私の生意気の為だけに行動したとは思えませんが、後日「あったんだよ、その普通のが」と言ってこれを発表してくれた時は、なんだか嬉しかったですね本当に。
そしてその音を聴いてその思いは更に笑顔で現れるというか、面倒な御託の並んだオーディオ雑誌の出番なんか必要ないぐらい明確な性格のとても聴きやすいこのMODEL201は、今では貴重な
「ごく真っ当な価格で入手出来る極めて普通の音楽センスを持った極当たり前のMM」
という、普通なことが稀有な存在という何処か言葉が間違っていそうな不思議な存在としての地位を保っているのです。
少しだけその普通さ加減を説明すると、この針自体が、敢えてその名は伏せますが、輸出ブランドとしても君臨した七十年代の数多の日本のオーディオブランドを彩るその中でも特に有名だったブランドの、比較的ポピュラーだったMMカートリッジを母体に開発された製品だからです。
だからよく見りゃ何処かに何と無く70年代の面影を見つけられます、そしてその音も。
繰り返しになりますが、この価格帯でこの音は本当に貴重ですよ、アナログやってる方、是非このシェルターMODEL201を一本手元に加えて下さいな。この価格が生活の負担にならない全ての音楽愛好家のアナログ機器を今だに使われている全ての皆さんに対してです、本当に。
アナログファンの皆さん、手元に普通に使える普通のMMありますか?最近。
今回、同社シェル「MODEL1011/1011L」にMODEL201を取り付けた状態で買って届いたらすぐにアームに接続出来る状態にしてお出し致します 。更に特別にaudio technicaのカートリッジケースもお付け致します。
価格は19,000円(税込)にてご提供いたします。