皆さん今晩は。

関東は既に梅雨入りして雨降りな毎日ですが、それでも梅雨だからって晴れない日が無い訳でもなく、晴れれば晴れたで強い紫外線に晒されたアスファルトの照り返しで暑いのなんのです。私は基本的に通勤は車ですが、普段の足はエアコン否クーラー等と言う洒落た物なぞ付いて居ない昭和製の排気量の小さなリアエンジン後輪駆動車なもんで、キャブの機嫌伺いながらギアシフト決めて窓開けて走っている分にはまぁ気持ち良いもんですが、市街地入ってちょっと渋滞気味になると、もうあっと言う間にそのエンジン搭載方法故に水温計の針がみるみると鎌をもたげる始末。
そうなると最早コックを開いてラジエター液をヒーターに導き、ダイヤルを最高温度に捻って外気導入側へレバーを寄せて、ファンを全開に回して車内は灼熱地獄と化す地獄絵図の出来上がり、漸く職場に辿り着いた頃には既に一仕事終えた気分です。まぁ令和の御代の今に何言ってんだか判んない自動車的死語が並んだ話はそこそこに切り上げましょう、要するに少し前までの日本は、車の運転自体もその性能を図りながら状況に応じた工夫をし環境に応じた最適を運転手自身が導き出して運転する時代があったんですよ、と。両手両足を常に動かし車内が暑い代わりに、スマホ弄ってのひき殺しとかAT頼りの暴走事故など起きようが無い時代ではありましたね、車の運転自体に細心の注意と対応力を求められていた故に…

さてお仕事、全国各地から色々なケーブルが端末処理の依頼で持ち込まれる当店ですが、今回お預かりした物はその中でも殊更高価な超高級品。英国CHORDのメートル当たりで3万円はする、例えば2.5mペアならケーブルだけで15万円はすると言うスゲー代物。で、早速お客様より届いたケーブルを箱から出してみたら…

 

 

まぁ、お客様自身がこの状況をどうにかしたくてこのケーブルを手前どもに送って下さっている訳ですから、その姿への非難がましい意味合いには捉えられたくは御座いませんが、コレを目にした際の正直な気持ちは

『・・・・・』

であったと隠さずに申し上げ致します。ケーブルの構造は水道ホース並みの極太外径の線体にメッシュシールド、容積の多い緩衝材に通る銀コートの4芯。この線を綺麗に剥くだけでもそれ相応の技量と根気強さとそれなりの時間が必要な事が容易に判る造りで、実際にこの姿から察するにお客様自身が相当苦労されたことも伝わりますね。つまりですね、このクラスのケーブルはそれ自体を趣味、得意とされない限りは、お客様自身が手を下す段階ではないと思うのです、既に。これは本来販売側の責任領域です。
一部の自称ベテラン高慢ちきオーディオ系に、趣味のオーディオのケーブル処理ぐらい自分でやって当然の様な言を吐いてそれを苦手とする向きを委縮させる傾向の方がおられますが、そういう方には遠慮なく言い返してあげて下さい。
『あなた随分いい車乗ってますね、当然整備も電装もオイル交換も車検も全部自分でやってんですよね、はしりゃ十分以上の性能の高価な車所有してんだから、当然趣味なんでしょ?出来て当然だよねそんぐらい』ってね。
つまりいい車乗ってるからって自分で手なんか汚さなくてもいい様に、高価なオーディオを愉しむからって難しい作業なんかに時間費やさなくていいですよって言いたいのです、私は。電気屋でエアコン買ったら当然費用払えば取り付けてくれるし、自動車屋に車預ければオイルだって車検だってタイヤ交換だってやってくれます。だから超高級アンプに大型で高性能のスピーカーを繋いで愉しむ為に、この超高級ケーブルを求めあてがいたくなるのは当然の要求であって、そのクラスに見合った美しい端末処理を販売側に求めるのは当然の購入側の権利なのです、費用さえ払えれば。
ところがこの立派なケーブルを売り散らかす大型家電カメラ量販がそれをやらないんですよ、正真正銘売りっぱなし。同じ店舗でエアコン買えば付けてくれるのに。水洗付き便座だって付けてくれるのに。勿論テレビだって洗濯機だって冷蔵庫だって。そのどれもたまたま設置の経験のある私自身が正直思うのは、それらに比べればこのケーブルの処理の方がよっぽど技術と技量を求められますよ?どう考えてもおかしいでしょ、こんな難しくて手間が掛かり下手すりゃエアコンやテレビより高価なケーブル販売しといて、販売するけど設置接続には一切関わりませんって姿勢はさ。
エアコン買って来ても正しく取り付けなきゃ何の意味も無い様に、このケーブル買って来ただけで適当に剥いて捩ったところで、性能なんか出ませんよ。正しく使って初めて性能が得られるという観点に於いて双方には何の違いも無く、故にそれぞれに対して専門性が存在する筈なのですが、何故かオーディオはこういう目に遭いがちですね、売るだけ売って後は自分でやれってあなた、コレは幾ら何でも…

 

 

販売側がやってくんないなら誰かがそれをやらねばなりません。私も高級では無くても趣味みたいな車を好むので、自分でやれる事はやりますが、出来ない事はプロに頼みます。ただ既にそれを販売したメーカー系はまずまともに相手にしてくれないので、腕の良いプロに頼みます。先日もラジエターやウォーターポンプ周りの整備をやって貰ったばかりです。オーディオもそういう事です、販売側がやってくれなくて自身で行うには荷が重い際には、それに適したお店を見つけ出して依頼してください。当店がそれに値するかどうかは、是非お客様自身でこのブログなり電話なり来店なり問合せして確認して判断して下さいませ。勿論当店以外にも優れた作業を提供できるお店は当然存在する筈ですので、高価で手間の掛かるケーブルを入手してその作業の手間に途方に暮れた際には、近所にそういったサービスがあった際には是非作業を頼んでみて下さい。
それでも見当たらない、或いは他店購入品の持ち込みに対して良い返事を得られなかった際には距離に限らず当店までどうぞ。現に今回のケーブルも神奈川県から見れば300㎞は西に進んだ場所からの送り込みでの御依頼です。
今回の依頼内容はバナナプラグ非対応のアンプのシングル出力でバイワイヤー接続です。4芯構造を活かしてAMP側を2本づつ対に、SP側を高域低域プラスマイナスの4本へ仕上げていきます。綺麗に剥くのにその被覆の硬さやシールドの存在故とても手間が掛かります。

 

 

はい出来上がり、切断や剥き、撚り上げ作業に各種収縮チューブ等被せ処理からQED AIRLOCのYプラグ6/8㎜対応型4箇所圧着、バナナ型8箇所圧着、及びケーブル被覆磨きなど、私の技量で正味3時間の作業時間でした。実際には連続三時間の作業は無理なので、日を跨いでの作業です。大層手間が掛かったとはいえ、綺麗な仕上がりが得られて私自身も満足感と達成感を得られた作業でした。
その音は、預ける前とお返し後の違いはお客様自身の感想を待たねばなりませんが、画面の前の皆様には冒頭の写真とコチラの仕上がりを見比べて頂き、どちらの状態で繋ごうとも皆様の選択の自由です。信号の通る線材自体に変わりは無いのですから、どう繋ごうと良いケーブルは良い筈だ、プラグなぞ余計な付加物だと考えるも好し、高価で高性能なケーブルを奇麗な見栄えと確実な処理で繋いだ方がいい音出そうだなぁと考えるも好し。

さて、漸く難敵を一つやっつけた、次の難物に取り掛からなければなりません。最近お預かりしているケーブルの作業内容の要求技量が高くかつその数も多く、お返し迄に少々時間を頂く事が増えています。まだその仕上がりをお待ちされている皆様方にはこの場を借りてお詫び申しあげます、もう少し待っててね、必ず綺麗に仕上げて納めますので…

 

良い音を得るには、機材の多寡やブランド以前に、何はともあれ綺麗な接続と適切な設置だと、即ち『何を使うかより、どう使うか』なのだと私個人は考えています→0466-20-5223