皆さん今晩は、ここ数日は漸く秋らしい涼しさと言うか、結構肌寒い夜でしたね。季節の変わり目に体調なぞ崩さずお過ごし下さいませ。
過日、川崎駅から少し歩いた京急とJRに挟まれた地帯にあるD&Mグループ社屋に御呼ばれして、B&Wの新製品なぞを眺めて聴いて来ました。この英国ブランドのスピーカーが日本で流通し始めた数十年前には、奇異にしか感じられなかった独特の形状を有した製品を送り出す当ブランドも、今となっては国内スピーカーブランドを粗方駆逐し尽くし(と言うよりは国内ブランドが勝手に消えて行ったのかな…)最早HiFiオーディオにおけるスタンダードとなったのは皆様もよくご存じですね。
当日はB&W内に於いてトップクラスにして主力級の800系シリーズを、805から801までの新型D4タイプを各種前モデルと比較したりしながら順に聴かせて頂きました。ブランド責任者で私達にはお馴染みのS氏の毒舌も相変わらずの絶好調で、その内容はとてもここでは書けませんが、新しく出たB&W800系新シリーズがそれを購える方にとっては間違いない物であることは十分伝わりました、検討されている方は是非当店で購入をどうぞ。

 

 

写真はその際の物で、その詳細な内容や評価は今後各種媒体で十分以上に喧伝される事でしょうからここでは敢えて触れませんが、試聴室に呼ばれる度に私は必ずそっと触れて帰る物があります。
写真中央で各種機材の載る立派なオーディオボードとしての板が目に入るかと思いますが、これは30年以上前のオーディオ雑誌のmarantzの広告でもチラッと写っていたそのもので、アッと思い出す方もおられるかも知れませんね。私は今から27年前の冬だったかな、相模大野の国道16号線脇にマランツが社屋を構えていた頃に、当時マランツが輸入代理店を中道から引き継いで務め出した英国B&Wのコンセプトモデル兼旗艦級の、新しく発売されるオリジナルノーチラス、でんでんむし型のアレね、そのお披露目で呼んで頂いて、今より遥かに若かった私はメーカーの試聴室に招かれた事に胸をトキメかせて臨み、雑誌でしか見た事なかったそこに、勿論初めてキチンと目にし耳にするノーチラスもですが、機材が並ぶ先の木製の大きな盤を見つけ大いに感動したのでした。
そしてそこには初めてお会いする件のS氏もいらして、当然今よりお若かったですが、そのスマートな外見と笑顔の毒舌ぶりは初めて会った時から今と何も変わらないのが、こうしてマランツと言うブランドの存在自体が資本も体制も設置個所も変転を重ねた今でも変わらずにそこにある木板と共に、こうして数十年経っても変わらずぬ氏の毒舌とセットで逢える事が私にとってはとても嬉しいのです。だから必ず帰り際にはS氏と挨拶を交わした後に私はこの板の縁をそっとなぞって帰るのです、俺また歳喰ったなって思いながら。
因みに先日のS氏の毒舌は書けませんが、27年前の事なら時効でしょう。27年前の相模大野の試聴室でマランツ製品やB&W製品を色々レクチャーを受けた後に、担当者から何か質問があればどうぞとなって、その時にずっと気になっていたのが部屋の脇に他社のアンプが各種沢山積んで有って、当時marantzはPM-90なんて素晴らしいアンプを販売していた頃でしたが、今よりは遥かに若く経験も浅く業界慣れもしていない大分真面目(←今でも真面目よ!)だった当時の私がその事を

『やはりアンプの開発とかは、他社製品との比較もするのですか?』

と問うと、S氏は今と変わらぬ邪気の無い笑顔で言い放たれました。

『あ、アレ?僕はあんまり他社との比較とか興味ないんだけどさ、営業連中が他社の製品はどうだこうだとアレコレ言って煩いからさ、一応買って来て聴いてバラしてみたのよ、でも大した事ないよね!』

以来幾年月、僕は年に1回程度ですがS氏にお会い出来る機会が楽しみだし、それと同時に常に氏と共に有る大きな木盤をそっと触って、当時の新鮮な気持ちで業界に向き合っていた自分を想い出すのです。27年前当時、試聴室の片隅で無造作に積み上げられバラされ内臓を晒していた『大した事ない』と喝破された5~6ブランドのアンプ達は、私が大好きだった山水も残念ながらそこに積まれていましたが、30年近く経て今、どれ一つその後継たるモデルは存在せず、と言うよりオーディオ製品を既に真面目にやっていないかブランドごと消滅したものばかりです。その意味で数多のライバルブランドが消え或いはオーディオから手を引く中に、今でもブランドを堅持しアンプも市場に展開持続出来て居る彼らからすれば、27年前に言い放ったその言葉もあながち大袈裟でも大言壮語でもない、なかなか先を見通したものだったのだろうなと思ったりもします。

今こそ規模が小さくとも、最後に立っている側の勝ちだとすれば、でんき堂もそうありたいと思います→0466-20-5223