皆さん今晩は、いつの間にか10月も半ばで、しかも末には、我々の為に滅私奉公日夜努力されてらっしゃる超御立派な人品卑しからぬ先生方を有難くも選ばさせて頂ける国政選挙ですって?
ここで政治を論じる積りなど毛頭御座いませんが、右も左も真ん中も関係なく、いつか嘘つきと忖度と口先と利権の輩がその席から未来永劫消え去る事を願っての一票でありたいですが、それってそのまま現行社会制度や政治形態への全否定みたいなもんなので、そもそも国政の場から誰も居なくなっちゃうかな、だからまぁ無理か、それはそれで面白そうだけど。

閑話休題、DENONにかつてDP-47Fと言うレコードプレーヤーがありまして、1985年の発表以来非常に長期に亘って数多くが販売され続けただけあって、今でも多くが皆様の手元で回っているのですが、これが文字通り日本がバブルに入りかける頃の元気だった時代の製品故に、実に多くの専用部品で作り上げられたお品です。
当時の位置づけとしては初~中級機の価格帯に属していましたが、木製キャビネットに納まった堅実な造りのコチラのボタン一つで、LP/EP盤のサイズをプレーヤーがセンサーでもって認識したうえで自動的に33及び45回転の適正な回転数を選択し周り始め、以降アームの下げも演奏終了後の戻しも含めて一切操作不要なフルオートプレーヤーを、当時59,800円の正価(まだ物品税だったよね)で売り出してた訳ですから、現状を知る身としては隔世の感を覚えますね。因みに統計データを見るに当時の大卒初任給が14万だったそうで、それから36年経った現在で20万ちょぼちょぼですか?それを元に考えて当時の14万円のうちの59,800円のレコードプレーヤーって、今が初任給21万だとしたら約9万円弱の製品と同じ価値であると手元の電卓が弾きましたが、ハッキリ言ってこの価格ではもう無理です、この国でそういうのは。そもそもこんな複雑な動きするオートプレーヤーは我が国では今後恐らく二度と9万円程度の商品供給可能範囲では作れないでしょう。作る気概のあるメーカー、それ以前に体力のあるメーカーがどこにも存在しません。
故にコチラをまだお使いの方は、典型的な必要以上にモノが良かった頃の日本製の罠に完全に嵌っている状態で、買い替え時期が来ていざ同等クラスを欲しようにも、同クラス価格帯9万円程度では何も得られず、ならばうんとお金を、59,800円の3倍も5倍も10倍も仮に出せたとして、今度はそもそもオートプレーヤーなぞもう存在して居ません。よってマニアがより積極的に音を求めてより高度で精密なマニュアル機に進む目的以外では、現在DP-47Fをお持ちで左程マニア思考でもなく普通にレコードを愉しみたい方は、壊れない限りは下手に買い替えないのが一番良いと言う結論に、積極的に以前より低性能のモデルに乗り換えたい!って趣向でない限りは買い替えになんら意味のない、ハッキリ言ってそうなってしまっているのですね。オーディオを販売して生計を立てている身の人間としては到底受け入れ難いのですが、まぁ事実です。
悲しい話ですがまぁそれは一旦置いておいて、例えばプレーヤーは健在でも針はどうしたって使っているうちに寿命がきたり折れたり、或いは積極的に他の物を使いたくなるものです。そこで勿論このプレーヤーも針を好きな物へ交換できるのですが、最初に私が書いた『専用パーツの塊』と書いたのを思い返して頂きたいのですが、このDP-47Fの採用したアームもシェルも、ほぼこのプレーヤーの為だけの専用設計みたいなもので他社は愚か自社内においても互換性が無いシェルを採用しています。つまり針自体を交換(←針先の交換に非ず)する際には、当時このシェルと同等品を予備で入手していない限りは、今使っているシェルを再利用致します。因みに現在DENONから販売されているプレーヤーの似た形のシェルとは基本的に互換性は御座いませんので悪しからず。

 

 

無闇に長い前置きに皆様お疲れでしょうが、漸く本日の主題の登場です。写真はお客様から送って頂いたDP-47F専用シェルに、米国GRADOのOPUS3MONO高出力仕様を、K’sーRemastaのKS-VWS-3024Dで組んだ姿です。先程当プレーヤーを『初中級機』と記しましたが、それ故に却ってリード線装着や針交換はあまり積極的な意味での交換前提では作られていないので、それを自分で行う事が尚更難しいと付記しておきますね。
今『それぐらいどうって事ないでしょう、あんた馬鹿にしてんね?』と思ったあなた、一応お伺い致しますが、リードチップとシェルピンの径には双方何ら規格等存在しない事はご存じですか?この専用シェルやカートリッジのに生え揃うピンに対して、もしリード線側のチップがきつかった際にはどうなさいますか?それを壊さずにどうやって広げますか?もし緩かった際にはどうやって適度な嵌合具合までにチップを潰さずに締め上げますか?特にK’s-Remastaさんのリード線は単線を用いた物が多いのですが、慣れない手先で小さな対象をこねくり回しているうちに、根元でくにっと一回曲げてしまって、慌てて反対側にもう一回曲げたら多分金属疲労で断線しますよ、だって金属だから。それでも針先を何かの拍子で飛ばすよりはマシですが、その作業だってもしピンセットでやるおつもりだったら、十中八九そうなります。だってピンセットは優しく摘まむものであって、挟んで握って力を掛けてく押すには不向きですよ?悪しからず。

 

DP-47Fは対応カートリッジ自重が12gまで、シェル装着時針先地点は基部より38㎜、カートリッジ形状によってはシェル構造と干渉になり装着不能な物もあり、リード線交換難易度高し、故に該当モデル御使用で針交換希望で上記に書かれた意味がイマイチピンと来ない方は、近所のアナログに長けた専門店さんへの相談を推奨致します。もし話が通じなかったり相手にしてもらえなかったり、そもそもそんなお店が足棒にして探しても見当たらなかった際には、当店まで相談くださいませ→0466-20-5223

 

追記:昨今、それ自体を所有しつつもカートリッジ自重と針圧、アームバランスを取る事とアームの水平出しを混同或いは区別出来ていない方が実に沢山いらっしゃいます。ただ、それを知らない事自体は何も悪い事では有りません、例えば世の中の実に多くの方々が自分の車のエンジンが横なのか縦なのかの搭載方向も、駆動輪のFFなのかFRなのかも知らずとも或いは気にもせず何も心配せずに(私には恐ろしいですが)普通に運転されているのと同じです。でもそういった方々は当然車の整備にも自ら手は出さない様に、先のレコードプレーヤーのアームにとっての、自動車における縦置きエンジン後輪駆動の様な、ごく基本の部分を理解されていない向きの方には、カートリッジ装着の様な作業は遠慮なくプロにその扱いを任せる事をお勧めいたします。問題は自動車と違って、カートリッジ装着程度の持込み作業を、気持ちよくお受けできるお店が極端に少ない事でしょうかねぇ…