写真はグレースのF-6Dと言う、古(いにしえ)のカートリッジに同じくグレースのHS-3と言うシェルの組み合わせです。オーディオ黎明期を彩った名ブランド『Grace』も、CD登場期の1980年代初頭にはその事業をブランド元の品川無線が事実上たたんだ経緯もあり、この有名な女優にして王妃の名前を戴いたグレースを知る人も最近は大分減ってきました。知らないと言えば、昭和も最早遥か昔の平成さえもうじき終わる今、グレース・ケリーの名も知らない世代が大半になりましたが、私はこの素敵な名前のカートリッジを手にするたびに、Rover P6と言う素晴らしく美しいセダンに乗ってモナコの崖から落ちて亡くなった美しい女優にして王妃の事を想います。

さて、昭和後期以降生まれや、まともな名画なんかに全く興味が無い人達には到底通じない様な感傷に浸るのはここまでにしてお仕事です。
以前も書きましたが、このグレースと言う会社は製品の美しさや音の良さはともかく、とにかく独立独歩の超個性的会社だったので、シェルやアームの配線が現在皆様が良く知るそれとは逆向きの設計です。即ちシェルのピン配列は左右逆なので、グレースのシェルに収まった針を手にしてかつ、それ以外のブランドのアームに据える際はとにかく一度手元を疑ってみてください。今回はそんなお客様の為に、針先位置調整とリード線交換を兼ねてピン配列の変更です。

 

 

続きましてはコチラ、やはりGRACEのアームケーブルで、こちらも完全にグレースのアーム専用です。
右上のDin5Pinプラグが雄ですね、現在流通する一般的アームケーブルとは決定的に違う箇所かつ、まず入手叶わないプラグ故に、古いオルトフォンアーム所有者が血眼になって捜しています。
皆さまもオークション等でGRACEのアーム等を落札する際には間違ってもケーブル無しのモノは手を出されない方がいいと思いますよ。
また、こちらの専用ケーブル自体もピン配列が逆を採用する同社に倣ってアームケーブルの出力側表記が左右逆なので、プラグ交換を兼ねて色識別を左右入れ替えておきます。同時にSFチューブも被せて古いケーブルから最大限の性能が引き出せるように配慮です。

グレースカートリッジとシェルをお持ちで通常アームに適応させたい方は一度ご相談下さいね、だいたい2,000円程度からリード線交換等の作業をお受けできますよ。また、古いアームケーブル、例えば今回の様な端子交換やSFチューブ被せ等のリケーブル作業も、内容次第ですが5000円程度からお受けします。
どちらの購入品でも構いませんしシェルやリード線の持ち込みでも喜んでお受けしますので遠慮なくどうぞ。

さて、帰ってグレース・ケリーの出演したヒッチコックの『裏窓』でも見よっかな・・・