今日の話は細かいです、細かいですけど些細な問題でもないので興味ある方だけどうぞ。
また、文章中に出てくる製品は決して特定のモデルを名指ししたい訳では無く、今の日本の企業の物造りへの姿勢の気分全体に対しての私見に過ぎないので、特定の企業を指摘しての事ではないとだけご理解くださいませ。

 

 

さて本題、上の写真を御覧下さい、比較的使用頻度が高いユニバーサルアーム用のシェルの側面拡大顕微鏡写真です。中央突起部が別パーツの手掛け部分で、下面にカートリッジが装着されます。
お気づきかと思いますが、手掛けパーツが僅かにズレて装着されているので段差が生じています。1mm無いでしょうが、このままここにカートリッジを組めば間違いなく左右前後方向に傾くか歪むかして装着されます。これは目に見えない様な細い溝に針先を沿わせて感度の良いアームを介して正確なトレースを要求されるアナログ再生に於いては大分問題になってきます。
この製品自体はもう相当長い期間に亘って作り続けられて来ている製品ですが、ここ数年とくにココの部分への配慮が欠けた組み上げを目にする様になりました。勿論部品の組上げは所詮は手作業の部分なので本来完璧など有ろう筈もなく、螺子で組まれている以上はユーザー側も調整で応じるべきなのかもしれませんが、ではこれから初めて自分でシェルに針を組むつもりの皆さん、ここまで気にしたこと御座いますか?既に組んだ皆さん、ココ気にした事ありますか?カートリッジのブランドやグレードやリード線の良し悪し気にしたり拘るのも大事ですが、オーバーハングを含めてここはそれ以前の問題の箇所でしょうね。
でんき堂スクェアはお客様への要望でシェルへのカートリッジ装着やリード線入れ替えを、購入、持ち込み問わずに日々行っていますが、このシェル自体は大変使い易いので良く利用しますが、ここ最近は一旦ここ緩めてから針を据えて平行面確認してから再び締め上げる機会が大変増えました。先日メーカーにいい加減にしなさいよと指摘は出しておいたので改善される事を期待していますが、そもそも指摘される以前の部分では有りますね。
聞けば今やシェルへのカートリッジの店頭装着を行う店舗は極めて少ないそうです。相当数が取り付けは出来ない、失礼、敢えてしないお店から出回っていると推測されるので、ご自分で取り付けた皆さん、ここ確認した記憶が無ければ一度手元のシェル疑ってみて頂いても良いかもですね。
また、このシェルでは無いですが、リードピン頸の部分が別体パーツでイモ螺子留めタイプの製品も結構あります、こちらもまぁ、これこそ本来はユーザーサイドに委ねるべき内容かもしれませんが、何も気にせず購入したまま取り付けている方が多いので、一度その正面から眺めた傾ぎ具合は疑ってみて下さい、VTA及び接続そのものに大きく関係するポイントです。勿論同時にオーバーハングの調整も済ませましょうね。

 

 

↑ オーバーハングの調整に便利なEPアダプター兼用ゲージ及び、アーム高さとVTA確認に便利なアーム調整ゲージ、共にPHONOPHIL製品

 

 

 

お次は、先程とは違うシェルで比較的最近出たモデルです。
一応先程のモデルとブランドは同じ所の製品ですが、この製品から生産自体は2000年以降のこの国らしく、主に亜細亜と呼ばれる大陸、半島、島国を含んだ圏内の日本以外の生産に変わっています。因みに先のモデルは価格を上げながらも日本製のままです。
で、こちら、手掛けは一体成型化されていて、先に指摘したその面での心配は無くなりましたが、それ以外があまりに酷い。
初期ロットはアームガイドピン(写真には写って居ない部分、端子頸部上面にある突起ピン部)が不必要に長く、ある有名な国産現行プレーヤーとペアで用いられているシェルと同じ企業が同じ部品で作って居る故に、そのプレーヤーと組んだ際には不具合無く納まりましたが、それ以外のアームに組もうとするとピンが長い故に当たって思うように挿入出来ないか、少々力技に出ようものなら相手がSMEの様な柔らかい素材を使うアームだった場合等、空恐ろしい結果を招きかねない状況でした。今までにこのシェルで、でんき堂スクェアでカートリッジを組んだ分はココを全て適正範囲に鑢掛けて調整してあるので問題無いのですが、本来ユニバーサルアーム用シェルがアームを選んじゃいかんですね、その自重に於いて以外は。
ここも2nd或いは3rdロットから改善された様子で最近は少なくとも当店ではヤバいの見掛けなくなりましたが、モデルチェンジをした訳では無いので、流通在庫に於いてはそれの生産が古くても新しくても関係無いので、やはり注意が必要でしょう。
更に、このシェルはどうにも問題が多いのですが、写真に写っている4ピンその物が極めて留めが甘く、そのまま使っている限りは気が付かないでしょうが、気を利かしてリード線交換に及ぼうものならニュルニュルとピンが押し出されるは引き戻されるは動くのなんの、場合によってはリード線抜く積りがピンごと抜けます。そもそもこのシェル、ピン端子を成形樹脂部内で固定する概念が製造段階から無い様子で、今までに百種類以上、数にして延べ数千個のシェルをカートリッジ取り付けで触って来ましたが、ここまで緩いのは私の経験ではコレだけです。
更に、写真でも分かる筈ですが、恐ろしく分厚いゴムリング。ここの優劣は古くから喧々諤々の箇所で、つまり有り無し両派及びゴム以外の高性能パーツへの換装推奨派の三派に主に分かれるのですが、私自身はどの意見もまぁそうだろうねと思って聞く程度で、個人的にはケースバイケースで付けたり外したり換装したりしていますが、このシェルに限ってはこの分厚いゴムリングはあまり感心しませんね。選択したアームによってはピン自体がアームに届かないか極めて不安定な接触状態に陥る可能性が高いですよ。製品と直接関係無いですが、納まっている紙箱の作りの悪さときたら、形だけは日本製と同じですが・・・

と、グダグダと問題指摘していますが、じゃぁ私がこの製品否定してるのかと言えばそうではないのです。要するに使い方と理解度の問題なのです。確かにメーカーに直して貰いたい部分も多々ありますが、ユーザー側が問題点把握して望めば致命的な部分でもありません、逆に望み通り精度も仕上げも完璧なシェルが出て来てウン万円じゃ皆が皆気軽に買える物でも無くなってしまうのです。つまりですね、言われなくともわかっとるワイと言うベテランが使えば別に問題もないのであって、そうではない方は、専門コーナーこさえてこのシェルも当然大量に、その他高価なアナログ製品販売している大手家電カメラ量販のエキスパートな方々に相談するかお願いしてみて、何故だか話が通じなかったり販売するけどつけませーん!みたいな対応されたら近所の専門店か、でんき堂スクェアまでどうぞ。
最近針やカートリッジを専門コーナーを有す大手大型量販で購入して、その足で当店にそれら持参で装着依頼に来られるお客様方大変に増えられましたが、でんき堂スクェアは持ち込み依頼も勿論歓迎致しますよ。メーカーもユーザーも勿論人間ですから、当然間違いも失敗もする訳で、私自身も普段はミスだらけの人間なので、たまたまアナログ製品購入するにあたって皆様方が最初に選んだお店が失敗だったとして、その選択を責める様な資格等を私なぞが持ち合わせ様筈は到底ないのですから。

 

購入、取付依頼はコチラまで→0466-20-5223

 

PS:そう言えば過日、不慣れなお客様を装ってアナログカートリッジの質問をして来た販売店がありましたが、ええ加減にせいよ?君たち。