もう四十年も昔に今とは大分営業内容が違うSAECが世に送り出していた伝説的ヘッドシェル、ULS-3Xと言うのがありまして、確かWE308SX辺りの標準付属品だったと思うんだけど、とにかくコレがなんとセラミックス製。
最近それこそ何十年ぶりに愛知県の窯業の盛んな瀬戸市でヤマキ電器さんがセラミックスのジルコニアヘッドシェルを製品化してくるまでは、流通製品としては健全な頃のVictorがLabolatoryシリーズで極少数用意した以外は、とんと見掛けないタイプのお品、要するに超貴重品。
1978年に12,500円だったこのシェルも、現在は中古相場で三万円の値が付いて好事家によって取引されている状況です。物価価値から換算すれば順当な気もしますが、三万円ってのはあくまで中古価格ですからね・・・。ともあれ当時のオーディオ業界の熱気と今の状況を伺い知るにはなかなか良い事例かなと思います。

閑話休題、その凄いシェルとDL103のRを持ち込まれたお客様のご要望で、でんき堂スクェアお得意のアルミボディ化を施して銀単線のリード線も奢っちゃえってのが今日のメニューです。今までお陰様で何十個もアルミボディ換装を施して来たこのDL103を、同時に実に多彩な色々なシェルに組み合わせて来たなと思い起こして見ましたが、ヤマキのシェルと組んだ記憶はありますがSAECのこのセラミックシェルとの抱き合わせは初めてだったかな?作業前からその出来あがった姿と出てくるであろう音を想像すると腕が鳴りますよね。ともあれお客様の貴重なシェルを預って無事DL103Rのアルミボディ換装も済んで音出しです。因みにシェルリード込み、お客様指定のチタンのボルトも含めて装着完成状態総重量は29.5g、流石に重い。まぁでもこのシェルが想定したSAECのWE308SXや407/23をお持ちなら何ら問題ない、逆に望む所よと言った重さでしょうね。

 

 

で、結果はと言いますと、その組み合わせより出る音に、お客様と二人してビックリして面白がって感動してアルバム一緒に通しで二枚聴き入っちゃいましたとさ。とにかく無駄な滲みがなく記録された情報を全部溝から掬って来て眼前に音の粒を広範囲に展開してくる印象なんだよね、淀みない低域の躍動感等はなかなか普段聴けないレベルです。アルミボディ化とセラミックシェルの組み合わせが想像以上に相性の良い事を知れて少々興奮気味です。

この貴重なSAECのセラミックシェルをお持ちの恵まれた方がいらっしゃいましたら、是非この組み合わせやってみましょう、楽しいですよぉ~。
それからSAECはSAECでも現在のSAECは当時のSAECとは大分違う会社なので、決してセラミックのシェルを売れ等と駄々をこねて彼らを困らせたりしない様にお願致します。私もかつて事情を知らなかった頃はそうしましたが・・・

 

 

そういやこのSAECのシェルの出た年はスター・ウォーズが日本で公開された年、いやはや、早いもんですね。
で、その映画中でお馴染みのシスの暗黒卿、ダース・ベーダーに向かって、実の息子たるルーク・スカイウォーカーが彼が暗黒面に陥る以前の人間の心を取り戻すよう願いながらも、父子でもって刃を交える訳ですが、最後の最後になって一瞬だけ人間の心を取り戻して息子の胸に抱かれ死んでいきます、そう言う映画です、要するに。
何をいわんや、つまり、当時オーディオで眩しく光輝いていたトリオやパイオニアやビクターに向かって、当時の心を取り戻して再び僕らの胸をときめかしたあの時の貴方達の精神をもう一度思い出す様に熱い願いで懇願して、僕が踏み込んでいってもきっと、

「何が熱いオーディオ魂じゃこのガキがぁ!当時と状況が違うんじゃ、状況が。要は金だボケェ、わしら企業はブランド引きずってるだけで、経営者も思想も当時とは別もんじゃぃ!いつまで単品コンポのロマンなんか語ってんじゃねぞコラぁ、このエセロマンチスト崩れのオーディオ屋の分際でワレぇ~!」

と、きっと一刀両断で叩き切られてしまっておしまいって、全然画にならない映画しか出来ないんだろうなと、実際彼らからはそれに近い返答と仕打ちを頂戴しております。パイオニアの木で鼻をくくった様な態度の営業直々に面と向かって

「僕らオーディオメーカーじゃないし、あんた達小規模のオーディオ専門店に回す様な商品は我々規模の企業からはもう出て来ない」

とまで平然と言い切られた事もあったしね・・・(笑)
でもさ、ダース・ベーダーも改心したんだぜ、あんた達も最後くらい、自分達がかつては何屋であったか、誰から支持されて来て会社が成長したのかを思い出して意地見せるのもいいんじゃないの?
そりゃ企業的には最後なんてあっちゃ困るんだろうけどね、世の中未来永劫続くものなんてある訳ないし、消えて全てが無くなったら残る物があるとすればその精神でしょ、だったらせめて記憶と思い出くらいは美しくありたいですね、その良かった頃の僕らの楽しい記憶までを全力で塗りつぶそうとする彼らの現在の姿勢に、少々胸を痛めながら今日はおしまい。

 

DL103のアルミボディ化もオーディオ(業界)の暗黒面もお任せ→0466-20-5223