世の中アナログブームなんですって。

私自身は趣味としてはそれ以前からですが、販売側としては四半世紀前のバブル崩壊近辺就職氷河期の入口に、アルバイトでメーカーのヘルパーとして衰退期に差し掛かったオーディオ業界に足を踏み入れたクチなので、正直言って売れて売れてうはうは~みたいな経験とか、オーディオの何かのブームは知りません。一度だけメーカー、販売双方の理解不足とエゴだけが生み出したかの様なサラウンドブームに右往左往だけはさせられましたが。
その後店頭に立った秋葉原の老舗の先輩社員に聞いた話では、オーディオブームの絶頂期のJBL4343みたいな大きくて高価なスピーカーが売れて売れてしょうがなかった時は、その為だけに埼玉だかどっかに専用の倉庫まで用意してそこに4343山と積んで、店頭にはお札の束握ったお客様方が列をなして並び、当時の創業社長が一階の売り上げ金を運ぶ時間も惜しんで、表から二階の事務所の窓を開けさせて紐で縛った札束次々投げ入れたのだとか。恐らく1960年代から1970年代の山水がJBL仕入れてた頃の話なんでしょう。
私が秋葉原に初めて立った2000年初頭は勿論そんな面影も形も微塵も無くって、移入モノのブラックバスが増えすぎた湖で僅かに残った日本古来種の稀少な小魚を多数で追いかけます様な客の取り合いみたいなとっても感じ悪い状況でした。しまいにゃ共食いみたいになって、その店の新入りだった私が、お客さんに一生懸命接客してアンプを買って戴いたら、後からそこの店の一応私の上司だったんだろうけど、元メーカー営業だった副店長が人の客盗ったとか騒ぎ出したりして、今思い出しても感じ悪いですね。入って一カ月もしない新入りが来店されて店内に入って来るお客さんを誰が誰接客してたとか知ってる訳も無いので、そういう事言いだす奴どこの店にも世界にも必ずいて、そうなると他の店員は陰で「あの客は4階の副店長の客だから関わらない方がいいよ」みたいな感じ悪い店が出来あがっていくんですよね(笑)
因みにそう言う裏でこそこそしたのは私苦手なんで、その一応上司の筈の副店長さんに正面切って

「それはあまりに筋が通らない話では御御座いませんか?そう言われるならば新入りの私にも分かりやすい様に来店されるお客さんに俺の客って旗でも立てておいて頂けますか?宜しければそれに関してより具体的に人目の無い静かな倉庫で一対一で目をみつめ合ってお話合い致しますか?ごく平和的に」

と、今より私も15、6歳若かったのでそれを多少雑に申し上げた所、あまりそういった直球型の人材はそこには今までいらっしゃらなかったのか、上から下まで全社を挙げた阿鼻叫喚の大騒ぎに発展して、結局その時の非常に男気の強かった当時の店長と以前から目を掛けて下さっていた当時の社長が私を擁護下さったので事無きを得ましたが。
でもこの時の店長、毎日の朝の日課の私が差し出したコーヒー旨そうに啜りながら、ニヤケた顔して

「おめぇ、ナカナカイキが良いじゃねぇか、気に入ったよ、俺もあいつは嫌いなんだよ、いつか言ってやろうと思ってたら、オメェが先に言っちまいやがった。筋が通らない奴と喧嘩すんのはかまわねぇ、でも“やる” ときゃ派手にやんなよ、うへへ」

と、丸で人が喧嘩したみたいな人聞き悪い事を江戸っ子だったのかべランメェ調で仰るので

「と~んでもございません、とてもとても、この度は大変失礼いたしましたぁ~」

と慌てて訂正したのが懐かしいですね。その副店長さんもつい先頃その店勇退だか何だかと風の便りに聞き付け、その店は結構昔ながらの情誼に厚い店だったので、当時そこに3年しか在籍しなかった私の為に、その副店長以外の全社全店事務方販売方スタッフほぼ全員参加の大変盛大な送別会を開いて下さった思い出も御礼もあり、ましてや20年近く在籍した偉大な副店長だから、さぞかし盛大な送別会を挙行するのだろうと、まだそこに居る古い仲間に是非それに僕も参加したいしその節の御礼も申し上げたいと打診した所、何故だか不思議な事に今回はそういった会も挨拶も何にもしないんだってさ、チェ、つまんないの。
アレ、なんでそんな話になったんだ、えっとブームだ、アナログの。
そう、アナログ。
ソニーがアナログディスクプレスするんだとか何とか、大手メディア新聞ネットTV様々で流石大企業が関わると話題で好意的に報じられていました。勿論この衰退気味のオーディオ業界で何であれ少しでも良い話が市井に広まるのは私も大変喜ばしく感じます、素晴らしい。

でもね、皆さんが喜んでいる所申し訳無いのですが敢えて私はノンを唱えてやりたい。

ソニーさん、自分たちが率先して規格なり何なり定めたCDメカも供給せずに野ざらし放置、それに頼って製品作っていたオーディオメーカー各社は放置プレイに泣き寝入り、その上SACDは一体どうしてくれるんだ?私は推進室の担当者の悲惨な末路を知ってるぞ、生産後7年程度経った製品は目の飛び出る様な見て貰うだけで何万もする高額な見積り基本料金を要求して基本的に修理したがらない、30万円超す様な超高級ヘッドフォンさえ10年経たずに修理不能、愛情注ぐ対象として売り出された筈の犬のおもちゃは数年で壊れてもつまんないパーツ一つ供給せず部品保有期間の義務は果たしたと役所以下の受け答えで治せませんと公言し、それを日々調教師し愛した飼い主たちを絶望の淵に追い込み、何故かそれを元ソニーの技術者達が寄り集まって立ち上げたソニーとは何の関係もない資本的にもソニーの何万分の一程度の所帯の小さな修理専門会社が

「こんなのたかだか数十円のパーツの問題なんですがねぇ、ソニーにとっては訳なく供給できる部品だろうに」

と言いつつ全国のアイボユーザー達の救世主となっている事実も無視し、かつて自分たちがこさえたレコードプレーヤーのベルトも針も一切関わりたがらないその姿勢で、世の中ブームだからアナログディスク生産するだとぉ?

「売れるから関わる、それが企業だ、情誼や人情や高い趣味性に対するユーザーサイドの深い思い入れや理解なんてビジネスの邪魔なんだよ、君」

って言ってくれれば僕も心情的に引きさがれるけどね、新興メーカーのやる事ならいざ知らず、社長が変わろうが昔と社風が変わろうがSONYのロゴで商売してんだろうが、未だに。
全国にはゴマンとカッコ良かったか頃のSONYに胸を熱くして、なけなしの金叩いて高額なオーディオ製品購入したソニーファン、信者と呼ばれる層がかつて確かに存在した事を思い知るべきだろうね。彼らがソニーファンにならずにマッキントッシュのアンプでも当時買っていれば今でも修理可能な事実も含めてさ。

因みに私はSONYのDATを愛していましたが、七年どころかほんの数年で全く素晴らしい対応頂きましたね・・・

まぁ、ソニーはSONYでもアナログ盤プレスすんのはソニーミュージックエンターテーメントのSMEですから、わたしゃぁ一切関わり御座いませんってなもんかも知れませんがね、じゃぁソフトとしてのSACDはどうしてくれンですかい?

以上、品の無い物言いにお付き合い頂いた皆様には大変申し訳御座いませんでしたと最後にお詫び申し上げます。
私自身はかつて輝いてた頃のSONYが大好きでした。色々言ってる様ですが今でももう一度、ああ言った胸の熱くなるSONY製品に出会いたいと本気で願っています。トリニトロン最高でした。7が三つ並ぶデッキ、どれだけ欲しかったことか。初めて親に買って貰ったウォークマンにどれだけ喜んだ事か・・・
ところが当店では現在基本的にSONY製品のお取り扱いが御座いません。何故ならそれは私達の様な小規模なオーディオ専門店がどれだけSONYに好意を抱いたとして、SONY自体は小規模なオーディオ専門店に愛情を抱いていないからだろうと愚考致します。
自分で言っていれば世話ないでしょうが、私はSONYのレコードプレーヤーでも調整させて頂ければ相当な良い音で皆様を喜ばす自信が御座いますが、SONYのレコードプレーヤーは恐らく規模が大きな超大型カメラ家電量販店程安く大量に取り扱えているご様子です。そんな店頭の若いスタッフ方々、CDとLPの国内生産出荷量が逆転した1986,7年以降に生まれたと思われる様な若くて瑞々しいスタッフが主な彼らの店頭で、新しくプレスされたSONY製黒色ビニールディスクが、アナログ経験豊富な彼らの調整と接客に於いて、趣味としてのオーディオ、レコード再生の素晴らしさがあまねく広く伝わりブームがより一層盛り上がる事を切に願う限りですね、一アナログファン及びオーディオを愛してる身として。

 

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