ソニーもシャープもパナソニックも連日凄い状況ですね、まったく。

NECに至っては、あのバブルの象徴のような不細工な本社ビルから丁度リストラ食らった社員がその足で飛び降り自殺したとかで、なんでそんな話をするかというと、ニュースを聞く限りその飛び降りたと言うNEC社員と私は年齢が近く、その舞台になったバブルの遺産的ビルが聳え立った当時丁度大学生だった私は、まさにバブルの真っ只中を、内幸町の徳間書店の入っていたビルの上にある外資系会社のフロアを、一週間以内に豪華なオフィスに作り替えろと言う、いかにもバブルらしい注文を受けた建設会社のリフォーム部門の下請けの下請けの下請けのアルバイトで何と日給二万五千円交通費食費別と言う凄いバイトをやっておったのですが、その時丁度その改装作業中のフロアから眺めるとこのNECの穴あきビルがドカ~ンと聳えていてスゲェなおい、と感慨に耽りながら現場監督に奢られた缶コーヒー休憩時間に飲んだ思い出があり、今回のこのニュースを聞く限り妙に感慨深いものを感じたのです。

因みにその私の唯一のバブル体験での収入は、バイト終了当日新橋で景気よく寿司つまんだ後に、残りは全額秋葉原のラジオ会館の一階にあった安売り電気屋で三洋のセンターミッドマウントのS-VHSデッキになりました。

さてそんな後先考えない短小軽薄なバブル期に至り、つくづく愚かな時代を過ごしたなぁと改めて思う今日この頃ですが、バブルなりにいいところも少しはあって、当時多少はブームのあったオーディオ業界において、所謂マイノリティにも手を差し伸べると言うか、売れるか効率的かどうかが全ての現在とは違い、絶対的多数を占めない事が分かっている物に対しても投資や研究が行われた点ですね。

つまりメジャーではない物作りへの存在とそれを受け入れられる企業、ユーザー双方の精神的余裕の存在ですね。その一例として今回のNS-1 Classicsは正にその証明のような存在です。

当時の国産スピーカと言えばまぁ殆ど全て、ハイテク素材オンパレードの大型ユニットを中心としたハードドームツイーター3WAY機が、しかも各社たいした見栄えの差も無いままに電気屋の店頭でバスレフダクト開いてドンシャンンギャンキン喚き散らしていた今思い返すだけでも悪夢のような時期ですが、その中でヤマハはやはりバブルで儲けて懐に余裕もあったからでしょうが、今までの彼らのスピーカーの系譜からは何の繋がりも無い様なこのスピーカーを突如発表して来たのが1988年って、そんなに経ったかぁ?

閑話休題、その内容が当時の流行とはまったく正反対の作り、即ち得意分野の楽器や家具部門の力も借りて来たと思われる綺麗で上品な箱に、当時は本当に採用の珍しい、高低共にソフトドームユニットを密閉方式で組むという、最初から分かる人だけを対象にし、かつ丁寧な製品で、その見た目どおりの品よく柔らかな鳴りは攻撃的な音の当時の国産スピーカーの中では本当に珍しく、結局やっぱりたいして売れはしなかったのですが、当時のスピーカーで今でもきちんと音を出したとして一定の評価を得られる製品が存在するとすれば、実はこのクラスではこのNS-1くらいしかないのですね。

 

当時から一部の方には極めて高い評価を貰ってはいたのですが、バブル一辺倒二十四時間戦ってなきゃいけなかった当時、今で言う癒し系でゆったり感いっぱいの鳴り方のスピーカーなど見向きもされなかった訳です。

よって、とてもいい音です。

ヤマハはこれを出すのが早すぎたのかもしれませんが、逆に言えば当事からこういった本来音楽的には聴けるスピーカーを、当事の日本のオーディオ業界がもう少し真面目に取り組んでいれば、現状のこのどうしようもない業界の惨状も、もう少しはマシな物であったかも知れないなと勝手に夢想もしたりしますが、どっち道日本の大企業にオーディオが無理なことは、先に名の出たパナソニック,ソニー,シャープ,NECの彼らがその後に示した態度で十分証明されているので、その大企業の一歩手前のヤマハの最近の姿勢を見るに、やっぱり無理かな、コレは。

今回の中古は決して程度良好とは言えないものですが、再生上は間違いなく良い音をしていてバランスもとれています。高域調整のアッテネーターも問題なく機能しています。

左右ともツイーターに潰れ痕があり、ある程度は直してありますが跡は残っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

外装も大きな割れやヒビはありませんが、擦れや滲みはあります。

しかしそれを差し引いてもこの価格でこの音なら、中古の付き合い方分かっている方には間違いなくお買い得だと思いますよ!

久方ぶりにこのNS-1をきちんと鳴らしてみて、いま“純”国産でこれを作るのは三十万円でも無理でしょうねぇと正直思いました、いい音です。

発売当事定価13万円ペア

現状渡し、22,800円

A.I

完売しました。