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以前にも書きましたが、吉本キャビネットさんは数多くのスピーカーブランドの箱を作ってきた製作会社です。
ここ数年の日本国内以外でオーディオらしい何かを作るかつてのオーディオ大手国内メーカーのだらし無さに頭にでも来たのか、ついにキャビネットメーカー自身が前面に出てきました。
手始めにキット製品を市場に展開し、誰でも楽しめる価格とキチンと組めば恐ろしい程良くなる製品でここ最近人気を博しています。

今回はステレオ誌2015/1月号に掲載された浅生昉氏設計のバックロードホーンスピーカーを、作りやすいキット形式に改めての発売。
バックロードホーン形態のスピーカーは、スピーカーユニット背面の背圧をキャビネット内を仕切り板で折り返しながら徐々に音道を拡張させながら距離を稼ぎ音量感を稼ぎます。
外見上の四角い箱とは裏腹に随分と複雑かつ凝った作りのものとなり、その設計も一筋縄ではいかないのですが、手馴れた方の設計によるそれを正確無比を誇る切削技術を誇る吉本キャビネットがキットにしてくれている以上、我々はそれを後は鼻歌交じりで正しく組み上げるだけで、恐ろしくコストパフォーマンスの高い、とても良くなるスピーカーが1セット完成ってなわけです。
面白いのは、この方式は自作系の筋では古くから存在し、腕のある方の設計の物を上手に組み上げると、それこそ既存のどの品も色褪せるくらいの魅力を放ち愛好家を魅了すると同時に、その構造からくる生産性の悪さから、メーカー系完成品としては極めて希であるという点です。確かにバックロードホーン特有の一種のズレを指摘する向きもあるのですが、実際にはバックロードホーンの奏でる音楽を耳にした一般の方などまず滅多におられないので、だったら尚更この近づきやすいキットで体感頂きたいものです。

話を戻しますが、組む前にパーツを並べて直ぐにわかったのはそのキットレベルを超越した各パーツ類のチリの精度の高さ。
キットなぞ本来はキットなのであって、作る工程でそれなりの修正加修が今までのこの手のものでの経験上でも必要になるものなのですが、この吉本さんが切り出してくるキットは本当に完璧な状態なので、正しい順序で組み上げれば特に何かするでもなく完全に平面の出たキャビネットが隙間なく組みあがります、いや驚いた、本当に。
もし完成時に歪みや段差や隙間が出来ていたとしたら、それは間違いなく製作者側の精度の問題と言い切って間違いありません。

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その証拠に今回は当社のN野と私で各一本づつを全く同じ環境下で特別な道具は使わずに(キット、説明書、木工ボンド、仮止め用テープ、抑えの重しのみ)こさえてみたですが、各板のボンド塗って貼り合わせて行っただけにも関わらず綺麗なキャビネットが完成し、非常に作りがいのある結果となりました。
およそ私の倍の時間を掛けて組み上がったN野氏作成分は、左右パネルと天板の境などに段差が生じたりしていましたが、これは全てキットの精度ではなくて製作者側の問題です。

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つまり組んだ境に段差など出来たらボンドが乾く前に修正すれば必ず綺麗に仕上がります。
さて、箱が出来て乾いたらユニットの装着です。今回は一晩重しをかけて寝かせました、乾燥した箱を叩いてみるとコンコンと軽く響くいい音がしました。
このモデルはフォステクスの6.5cmフルレンジを並列接続で各ボックスにつき二本用います。恐らくサイズを抑えた箱に音道を確保する肝がこの小径フルレンジユニットの並列利用なのでしょう。
FOSTEXの6.5cmフルレンジユニットP650Kは1100円/本のとてもお買い得なユニットなので、今回4本揃えてもキャビネットと合わせても12000円程度で全てが揃う計算です。
因みにユニット自体は8Ω設計なので二本並列だと4Ω、要するにどのアンプでも問題なく動作します。
よくこの辺わかってない家電量販屋のオーディオコーナーが多くて辟易しますが、まぁ彼らは好きでその売り場にたってるわけでもないのであんまりあげつらうのはやめときましょうね。

閑話休題
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キャビネット側にはSPターミナルも用意されており、ユニットに対してプラスマイナスを間違わないように、それぞれサイズを変えた適合した端子が色分けされて予め並列配線装着された状態で同梱されているので、スピーカーユニット背面に各々形の合う端子を差し込みユニットをキャビネット正面に二号のドライバーで適切にネジどめすれば全ては完成です。
出来上がったその姿はNHK教育テレビのパペットアニメのロボット・パルタみたいです、わからないか。

スピーカーをきちんとした台にセッティングして正しい角度でもって配置することは、そのものの価格やクラスに関係なく重要であり基本なのでここでは敢えて深く触れませんが、ともあれ適切な配置を施した上でのこのキット完成品の奏でる音の素晴らしさときたら一体全体なんなんだ、これ。
もし数多の完成された高価なオーディオを販売するという職業を私自身が選択してなければ、純粋に音楽を楽しめればいいだけの立場での発言が許されるならば、正直言ってこれで十分だと言い切れる音楽再現性です。
キット特有の仕上がり加減や、ハイファイレベルでの微細な解像力レベルで話せば幾らでもアヤは付けられますが、こと音場再現性に限って話せば、完成品で10万払っても得にくいレベルの音響特性を部屋いっぱいに放ちます。今これを書いている私の後ろでは、オランダのフローニンゲン、聖マルティン教会のオルガンが響き渡っています。小型スピーカー特有の頑張っている感の全く感じさせない広大なステージ再現です。不思議なもんですね、本当に。
恐らくは小径フルレンジユニットのシンプルさ故の特質と、箱の設計の巧さが上手くハマったのでしょう。
皆が皆この様なキットを作り始めてアイフォンを手頃なアンプに繋いで音楽たのしみ始めたら、少なくとも音楽再現性においての比較なら家電系ブランドのオーディオ製品は全滅ですね。
箱を目一杯響かせて謳うスピーカーです、キチンと組んで安定した設置をする事が、1万円少々と僅かな時間と作る愉しみでもって得られるこのスピーカーを最大限に楽しむコツになると思います。
しばらくオーディオから離れていた方も、かなりの高級機の使い手も、そして全く初めての方も、休日の午後でも使って、モノ創りの面白さのほんの一端と、とてつもなく広い音場を手に入れてみませんか?

店頭では完成品をしばらくデモします、一度驚きにいらしてくださいませ。
正直お店の立場で言うと、こればかりをいい、いい、言って勧めていると多少まずいことにはなるのですが、こちらを選ばれる方にとっては何ら問題のない大変素晴らしい商品ですね。

寸法:280H ×180D×168W

http://www.a-sq.net/item/bw650k2p650kx4.html (販売はこちら *ユニットセット)

http://www.a-sq.net/items/keyword/bw-650 (販売はこちら *キットのみ)

TEL:0466-20-5223(お問い合わせはこちら)