1990年代中期、ラックス製品が市場になにも並んでない様な危機的状況の暗黒期を過ごし、紆余曲折を経て新資本傘下にて新生ラックスマンがL-507sで息を吹き返し、それから10年ほど経た2005年夏に満を持して発表したのが、創業80周年記念モデルの、今に繋がる590型番を持つ最初のモデルのL-590Aでした。圧倒的な実力を誇った純A級動作アンプのL570X`sの再来を感じさせる力作で、このクラスのプリメインの常連だったサンスイの907も当時既に影は無く、元々このクラスのプリメインアンプには一日の長があったラックスマン、丁度良いサイズ感価格感を武器に市場を席巻したのが懐かしいですね。爾来数度の変遷を重ねて4代目、今はL-590AXMarkⅡとなっています。もうここまで来ると、この型番のままこれ以上アナログアンプを改良なんて出来るのかな?と、ラックスの関係者には余計なお世話だよと叱られそうな心配が頭をもたげるレベルです。要するに590系統はどの時期どのタイミングで手に入れても常にベストでした、とても良いアンプです。

20年以上は昔話ですが、友人が購った同社のプリアンプをタンノイで二人して散々聴き倒していたら、入力系統が各々皆音質に違いがある事に気が付いて、生意気にも先方のサービスに電話入れて

「あんのぉ~、つかぬ事伺いますが、入力の1も2も3も4も同じケーブル同じ機器で聴き比べたですが、どう聴き比べても皆音がちがう気がすんですが、コレ如何に?」

と、今にして思えば随分間抜けな事聴いたもんですが、当時のエンジニア氏曰く

「そんなのセレクターからの配線各端子不等長なんだから当たり前でしょ!好みの入力選んで使えばいいんですよ」

と即答され撃沈しました。でも考えて見れば全くごもっともで、今だったら何だかんだと当たり触りない穏やかな事を回りくどく言わないとすぐ録音だ炎上だ何だと面倒な時代になりましたが、この頃ってまだプライド持った頑固な職人みたいなのが沢山居たから、枝葉の事象に目を奪われがちな未熟な私が、物事の本質を覚えるには良い時代でしたよね。このエンジニア氏にはこの時限りの電話での短い遣り取りでしたが、他にも今でも私にとっては大変有り難い言葉を貰っていて、ボリューム無限抵抗時の残留ノイズと言うか僅かに聴こえる音楽信号ですね、能率良いスピーカーなんかだと確認し易いのですが、とにかくそんな話もしたら

「あなた、どっかのアンプみたいにそこ徹底して消したら、そりゃ消せるけど、美味しい水と一緒で、旨味まで消え去って音楽つまんなくなっちゃうよ」

と言われ、確かに蒸留水なんて美味くないもんねと妙に納得したもんです。今でもそこの想いは私は不変で、全体の音楽は丸で耳に届かず、重箱の隅の見えなくてもいい部分を鬼の首取った様な勢いで偏執的追求に喜びを見出しがちな不思議な世界を漂う一部の方を遠目に眺めながら、当時のラックスが教えてくれた全体のトーンで音楽を表現して愉しむ姿勢を20歳代前半で知れたのは幸いでした。話が相変わらず脱線気味で申し訳無いですが、つまり最新のこのアンプでも、キチンとそのラックスマンの良い所が体現されています。ただ流石に時代が変わりました、このアンプで入力セレクター毎の音の違いや残留ノイズを見つける様な粗捜しは、恐らく時間の無駄になる事でしょう。件のエンジニア氏は確かにそこの追求の是非を教えて下さいましたが、20年の時を経て、ラックスマンは面白さ愉しさを失わずに精度を上げる事に成功したようですね。私自身は色んな音がしたラックスの方が好きだったなんて余計な事を言うと話がややこしくなるので、今日はここいらでやめておきますが。

昔カワサキのバイクだったか、エンジンからオイルが滲むって文句いったらオイルが入ってんだから当たり前だろと返されたと言う、嘘か真かとんち話みたいな笑い話がありましたが、こういうの好きだなぁ、僕。入力端子ごとの音の違いの当然さを簡潔に教えて下さったこのエンジニア氏も、きっと同じ時代を生きた方だったんでしょうね・・・

 

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