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今日のお仕事は、お客様からお預りしたレコードプレーヤーの再整備。

モデルは1981年発売のTRIOのKP-700、当時のオーディオ青少年にとっての憧れの対象であり、ベストなプレーヤーであったと思います。
これ以降はブランド名がケンウッドに変わっていくので、トリオブランドとしては最後期のモデルに当たるでしょう。当時の価格で64,000円、今の金銭的価値で言えば14~15万円程度になるでしょうか。同等レベルの物を金額では無く性能的な面で今求めると、20万円でもちょっと難しいでしょうね。
どの道、名前こそ残れオーディオに対する姿勢や、企業形態に関しても全く当時の面影の無い、今の彼らにそれを求めるのも酷というものでしょう。
如何にも80年代初頭のモデルらしく、フェザータッチの操作系統や、演奏終了後に自動でアームが上がる等のセミオート機構、非常に丁寧なボディワーク等、随所にトリオ、或いは当時の日本の勢いを感じさせます。
それ故に時間が経てば不具合もあちこち出てきますが、使用の継続をユーザーが望みモーターが回る限りは誰かがそれを治すべきなのですが、肝心の製造メーカーに、ケンウッドに限らず今の日本のメーカーには、その姿勢が全く欠けていますので、今回は片側の音が出ないという指摘なので、まずは凡その症状をお店で診断した上で、然るべき修理専門業者に回す算段でお預りしてきました。
ざっと診断してみると、一番の問題は左チャンネルの音が出ない件と、オートリフトアップ機能の固着が主な所。
この程度ならば、手間を掛けた梱包と高い輸送コストと修理専門業者さんにお支払いするお金を掛ける事も無く、お店で修繕出来ると判断がついたのでバラして治してしまいました。
一通り整備を終えた後、確認の為にかけたレコード盤から問題無く音が奏でられ、最後にインナーグルーブに針先が接して、当初全く動かなかったアームのオートリフトアップ機構が復活作動し、自動で持ち上がったのを見るのは、中々の満足感であり得難い物がある瞬間でした。
あとはお客様へのせめてもの気持ちでボディ全体を磨き上げました。
原因を見つけるのに多少時間は掛かりましたが技術的にはそう難しい事も無かったので、この件に関してお客様から頂戴する修繕金額は1万円程度です。
私達でんき堂スクェアでは、オーディオ製品の修理も承っております、まずはご相談下さい。
お預りした修理の必要とされるオーディオ製品の依頼先は、基本はそのメーカーのサービスであり、又は修理の専門業者に委託致しますが、不用意なお金を使うのが目的ではございませんので、一旦店頭でのお話合いの上お預りし、その内容自体が店頭での修繕や調整で済む場合はこちらで作業を行う事も多々あります。
また、潰れてしまったサンスイ等はともかくとして、存続メーカーにも関わらずサービスを放棄されてしまった製品の場合、可能な限りそれを治す修理専門業者を探す事も致します。つまりお客様の求める内容とそれを提供出来る技術と姿勢を持つ組織とのマッチングを取り行う訳ですね。

TEL:0466-20-5223(お問い合わせはこちら)

 

以下に続く文章は、上記に連動したただの皮肉なので、興味無い方やその手の文章に耐性をお持ちでない方はお読みになられない事をお薦め致します、まっ、怖い物見たさの方は軽いお気持ちでどうぞ。

今回このトリオのプレーヤーはたまたま店頭で対応出来る範囲でしたので私達で修繕致しましたが、もし、その範囲を超していた場合どうしたと思いますか?
そうですね、店頭で駄目だった場合、常識的に考えればトリオのプレーヤーは今も元気なしかもビクターまで飲み込んで、ますます元気なケンウッドに頼むのが当然だろうと誰でも思うかもしれませんが、あらビックリ!今のケンウッドにトリオの製品を持ち込んでも、知らない土地で知らない人に道を聞いた方がまだましと思える位の、とても素晴らしい対応をして下さるので、初めから分かっていてそんな嫌な思いをする必要も無いので、横浜にいらっしゃるとびきり腕利きの元メーカーサービスの責任者だった方が個人でやられている修理専門店に頼むつもりでした。
大規模の大学病院が見放した患者を、町の小さな開業医が治すみたいな感じですが、今の日本の家電屋が売り散らかしたオーディオ製品達の立場は正直こんなもんですよ。

最近、大きな家電量販店に持ち込んだオーディオ製品の修理に纏わるトラブルを大変よく耳に致します。
特に未だに存続しているメーカーの製品にそれが多いです。要約してしまえば、修理と言う物に対して求められる高い技術力や費用や手間に対してあまりにも無理解なユーザーサイド、販売店、メーカーすべての責任ですが、特に東芝、日立、シャープ、パナソニック、三菱、ケンウッド等の未だに元気に存在しているメーカーの製品を売り散らかしながら、オーレックスもLo-dもオプトニカもテクニクスもダイヤトーンもトリオも満足に知らずに「日本一の電気屋」なり、「専門性の高い接客」を謳う彼ら販売店が最大の問題であり、また一度は人々に夢を与え、それが市場に於いてベストであると宣言したにも関わらず、生産終了から7年経つなり掌を返した様な対応で、その自社のブランドを信じてついてきたファン達を、放り出すかの様な姿勢で路頭に迷わすメーカーの姿勢がそもそもの問題です。ましてや一度掲げたオーディオブランドやオーディオ売り場を都合良く掲げてみたり、具合が悪くなった途端に縮小して無かった事にしたり、はたまた再び昔の名前で再開する様な、白物家電ブランド及び白物家電屋の姿勢にはもうウンザリです。

皆さんどうぞ当店が全てとは言いませんので、オーディオの購入も修理の相談も、メーカーの規模や売り場面積の大きさ等に決して惑わされずに、ぜひともオーディオ専業メーカーなり、近所のオーディオ専門店なりにお任せ下さい。
こういうかつての日本が作っていた随分良い物を手にする度に、かつてその輝きに盲従していた自分の姿勢への反省も僅かに含めつつ、つくづくそう思います。以上