はんだ1 はんだ2

スピーカーケーブルにも色々仕様や種類が御座いますが、その断面をつぶさに観察して頂ければお分かりのように、撚り線構造、即ち細い線材を複数撚って一本に束ねた物が製品的には最近の趨勢を占めています。

単線や太めの線材を数本撚った程度の、比較的硬めの造りの場合は問題にならないと思いますが、一本一本が極めて細い線材の集合体で出来あがっている線の場合(例えばモンスターケーブルの様なタイプですネ)は、極めてしなやかな構造なので、その線形自体は指で捩って回して撚り固めた程度では、強い力が加われば簡単にさばけて形を変えてしまうものです。

スピーカーケーブルはアンプやスピーカーのターミナルの穴に通してターミナルエンドを回して締める使い方が最近は多いので、昔良く見かけた、例えばYAMAHAの1000Mでお馴染だったバネ式でパッチンと抑えていた時代は、あれはあれで案外合理的で、バネの力でケーブルに対して常に一定のテンションで圧し付けられていたのですが、ネジ回し式ではどんなに強く締めたつもりでも、締められている線材自体が圧力で線径が変形していくのと、音楽信号と言う細かなサイクルの振動の繰り返しによって、再びターミナルを回してみると結構緩んでいた、なんていう事がしばしば起こりえるのです。

また、最近のアンプやスピーカーは、以前と違って本当に大きくて立派なスピーカーターミナルを採用する様になったので、その径の拡大に応じて当然締める力が非常に掛かり易くなっており、緩む事を恐れるあまりに過度の力で締めこんで最悪はターミナル破損、欠損、つまりネジ切ってしまう事態も十分に考え得る、或いは既にそういった事故も起きている現象となりました。

「そんなの加減考えれば分かるでしょ、壊すまで回しますかぁ?」

と、ここまで読んで思われた方は、それはちゃんと物事が出来る方の感覚です。

実際には世の中には実に色々な個人個人の「常識加減」が存在していて、身の回りを見渡すだけでも自動車のホイールナットを締めこんでハブナット折ったり、叩いても割れないので「是非試しにこのハンマーで叩いてみて下さぃ~」と豪語するとあるPCディスプレイメーカーの内覧会デモ会場で説明担当のオネーさんが笑顔で手渡すハンマーで空気も読まずに本気でぶったたいてディスプレーにヒビ入れたとか(ブラウン管時代の話ですよ)、とあるオーディオ用アナログカートリッジをシェルに精密ドライバーのマイナスで留める程度の話なのにボディ全体が圧壊崩壊するまで締めこんで一個駄目にしたとか、コレクトチャックのRCAプラグなのにそれを忘れて抜けない抜けない喚いて挙句の果てにペンチで握って端子ごと引き千切った家電量販店員とか、まぁあんまり書き込むと角が経つのでこの辺でやめておきますが(もう十分だよ?)、ともかくあり得ない話ではないのです、大型ターミナルの回し過ぎという事象は。

因みにハブナット二十年前に折ったのは私の事です。よしゃいいのに固まりついてなかなか緩まないホイールナットを、十字レンチで力任せに回したら、急に手応え軽くなったと感じた刹那、ポロっとナットが足元に落ちて来て、白化したボルト切断面が無言でこちらを見つめている姿が、当事者の無能さを暗に非難してるかのようで悔しいやら腹立たしいやら・・・

閑話休題、話が逸れました、すいません。

ともあれ半田で軽くスピーカーケーブルの端末をマトメておくことはそんなに悪い事ではありません。

最近よく市販されるオーディオメーカー各社の立派なバナナプラグやYラグをケーブルの端末に使う事も増えましたが、これらは大概が4~6㎜径の筒に導きいれた線材をイモネジで留める構造の物が多く、この場合も撚っただけの線ではイモネジの接頭面だけでは圧が足らずに簡単にすっぽ抜けます。抜けたらまた入れ直して締めれば良いのでしょうが、実のところこれらの端子類は大変に柔らかい金属類(メッキコートされた真鍮質な物が多いですネ)を用いるので、イモネジの締めすぎや複数回の締め直しには結構脆いものです。つまりネジ穴がバカになってしまうのです。

その際もケーブル端末を軽く半田どめしておけばイモネジでも十分テンションが掛かるので、悪意を持って引っ張らない限りはまず抜け落ちる心配は無くなると思います。

勿論当初の話に戻って、端末を半田処理したスピーカーケーブルを一般のスピーカーターミナルでもって

「必要十分にして常識的な力」

で締めて頂ければ、裸剥き撚り線状態のままよりは遥かに、安定した接続を持続できるのではないかと思います。

一部ファナティックな領域の極みに達したマニアのうちでは、半田の使用に対する否定的な反応も当然出ては来ましょうが、ここはあくまでもごく一般の使用における何よりも安心して使い易い環境を念頭に話を進めていますので、実際のところオーディオの機械が一般的には入り口から出口までの信号の流れに於いて実に沢山の半田接点を通過してる現実に於いて、スピーカーケーブルの端末の半田処理のみを論(あげつらう)事に関しての問題点の有無を、ここでは今回はあえて論じません。

尚、店頭で依頼を受けて制作するケーブル端末半田処理は、一般的なお店で購える、ラジオ、電気製品回路向きの半田を使わせて頂いております。

以上を踏まえた上で「半田処理面倒くさいけどやって貰えるならお願いしたいなぁ」と、少しでも感じて頂けた際には、是非スピーカーケーブル御注文の際には合わせてその旨申しつけ下さいませ、喜んで承ります。

 

4ヶ所加工賃 1,000円(片側LR+-)

*例:アンプ側、SP側両方の場合は2,000円となります。一部、対応出来ないケーブルも御座いますのでご相談ください。左写真が完成図です。右写真は半田未処理と処理後です。

TEL:0466-20-5223(お問い合わせはこちら)