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ステレオサウンド188号にスイス・ジュネーブのゴールドムンド訪問記が出ていましたね。

同社新拠点の工場規模は、以前の四倍に拡張しているんですって!

すごいですねぇ、我が国でオーディオやってるブランドの規模がここ最近で4倍になったなんて話は全然聴いた事無いので、全く大したもんです、ハイ。

その代わり規模が1/4以下になったとかオーディオ事業部撤収したとか、創業以来最低の売り上げを記録したとか秋口に半分近い人員をリストラする予定とか、そんな話は実によく耳にします、残念な事に。

しかしこのゴールドムンドは、その扱っている製品価格帯の大概が、日本の高級メーカーのトップクラス価格帯の更に上の物ばかりだと言うのにね。

まぁ工場規模が四倍になったのと売り上げが同数比例するかどうかは知らないけど、少なくとも日本国内のメーカーでオーディオ用の工場大きくする予定の会社は無いんじゃないですか?

で、ゴールドムンド。

一部略して「ムンド」「ムンド」と言われる向きがあるけど、アレを聞くと、売り出しの頃の鶴太郎が喚いていた「ムードンコ」みたいな語感でどうも品が無くて宜しくないって、もう誰も覚えてないか。

「やっぱアキュとかエソって国産なわけでぇ、ムンドとかジムランみたいな洋モノとはステイタス性が云々~」とかほざく店員ってひっぱたたきたくなるでしょ?たたいちゃいけないけど。

ともあれここではキチンとゴールドムンドと書いてゆきましょう。

あ、あと「パイさん」とかもいやだ。本厚木駅裏とかの安っぽい風俗店のあんちゃんの呼び込みみたいで品が無いと思う。

他法人営業から特に「パイさん」と親しみをこめて呼ばれるそのメーカーに、今現在どんだけの品や昔日の面影があるんだかどうかは敢えてここで論じる気も無いですが。

さて、話がそれた、ムンドもといゴールドムンド。

その超高級さ加減故にどうしたって羨望及び毀誉褒貶にさらされ易いのはやはりそれ自体がブランドの為せる業なのでしょうが、私自身は長いオーディオ生活でそれほど接点があった訳でもなく、趣味側としても販売側としても「すげぇなぁ~、おぃ」って程度だったのですが、ここ最近、同社にとっては比較的エントリークラスな、それにしても一般論としてはやはり十分高級な二機種のプリメインアンプ、Metis5とTelos390.5を聴く機会が比較的長くあって、今まで自分自身がある種の気後れと無知さゆえに遠巻きに眺めている様な姿勢で臨んでいた同社の製品に対して、その良さの一端がようやく垣間見得た様な気がしてきました。

ここ暫くは特にTelos390.5をいじっているのですが、これとてもいいですね。

巷間言われるほど超高級機特有の嫌みがないっていうのか、極めて自然な存在で、眦決して(まなじりけっして)臨む様な対決姿勢的存在ではありませんでした。その機器としての佇まいもそこから紡ぎ出される音楽性も。

さわってから気が付いたのですが、このTelos390.5はDACも内蔵していて同軸や光に加えてUSBも装備しているので、PC繋いでシンプルに組んでお終いってのも有りなんですよね。

確かにこの価格だとHi-Fiマニア的には相当ごちゃごちゃしたデカくて重くてスゲェ奴並べて悦に入りたいものなのですが、その一方で広いリビングにスタイルの良いスピーカーを広めに配して、手元のローテーブルにこのアンプを仕舞い込んで卓上にはノートPCだけなんて状況でネット眺めながらソファーに寝そべって、柔らかくて透明感のある音楽再生に包まれてのんびり過ごすのにも憧れたりするんですよね。

更に実際、オーディオファンでもないけどよい物で好きな音楽を聴きたいと思っている方は比較的多く存在はすれど、結局いつまでたっても日本での高級オーディオが音楽好きよりはオーディオ好きの為の存在になりがちなのはまさにここで、金銭面の問題が無かったとしても、それこそオーディオ的憧れがないと、アキュ(フェーズ)やエソ(テリック)の巨大メカ山積みに巨大ウーハーずんどこスピーカーはやっぱり一般には無理があるんですよね。

先日アキュ(フェーズ)の一番大きいプリメインとB&Wの2Wayの角付きの一番高い奴の組み合わせを、ゴールドムンドと米国マグネパンのフラットパネル型スピーカーの組み合わせに入れ替える仕事を受けて無事収めて来たですが、そのあまりの音楽再現性の変わりようと、その組み合わせを配した事によるお客様の部屋全体の佇まいと見栄えの変わり様に、私もお客様もびっくりしたというか感動したというか、そういった事があって、その前のアキュ(フェーズ)+B&W角付き組み合わせの納品も数年前の自分の仕事だっただけに、はじめっからこっちにしといてあげればよかったかなぁなんて内心反省したりもしましたが、お客様からは、この組み合わせを良いって思うにはやはり世間一般で良いと思われている物を十分経験してからではないと中々理解出来ない物じゃない?とお言葉を頂戴し、あの時はオーディオ経験的にも若かったから例え今回の組み合わせを奨められたとして素直に受け入れられたかどうかは分からない、何故って機械的オーディオ的存在感では確かに前者の組み合わせの方が明らかに立派に見え有名なのだから、と言った趣旨の言葉も貰えて嬉しくなりました。

確かに昨今の円安から来た値上げ分も含めて、価格面的にはゴールドムンドの導入には相当な覚悟は必要でしょうが、日本国内におけるゴールドムンド製品自体が、輸入品によくありがちな彼の地の価格と開いてる訳でもなく、世界基準で十分良い値段で販売されている訳で、あとはこの存在の理由を理解して自分が用いるかどうかですね。

特徴的な判り易い個性をひけらかす部分は、少なくともこのプリメインアンプにはないのですが、これだけタッチの優しい存在感と音楽再現性を持った、ごく普通の音楽好きの方に楽しんで貰える製品は結構希少と言うか貴重です。

センスが良い方が車やカバンを好みで選んだら結果として高額な物であったという程度の感覚で、このアンプもそのセンスの範疇に入る事を切に願います。

最後に「おまえ褒めすぎだろ?」と思われないように一個ケチ付けときます。

ゴールドムンドジャパンのY社長、カタログ見てもHP眺めても取説読んでもどっこにもこのTelos390.5のデジタル入力の対応周波数とか書かれてないんですが、やっぱりそういった“こまい”事気にしてちゃここの製品の本質理解出来ませんかねぇ?

あ、それとこのアンプ、当店で試聴できます、Metis5もあります、素敵ですよ、皆さん聴きに来て下さいネ。勿論気に入ったら買って下さい!