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少し良い音出そうと思ってオーディオ物色すると、どうしてもサイズがあるんですよね。

勿論それは各メーカーの目指すところの世界観なり音楽再現性を求めて、造りや部材を奢ってるうちの結果としての巨大な外観なのですが、大きい事は良い事だなんて大きな声で叫べる時代でもないし、アメ車でさえダウンサイジングされてきている昨今、ウスラデカイとしか言い様の無いサイズにまで肥大化した現代のHi‐Fiオーディオを眺めるにつけ、その大きい事自体を愉しめるマニア層を(私自身もその側の人間なのでしょうが)例外とすれば、音が良いだけでは大きなオーディオ製品の導入は一般の感覚ではやはり乖離した存在なのかなとも思わずには居られません。

だけども、よい音で音楽を聴ける環境はやはり素敵だと思うのです、自分の一番居心地の良い空間で。

好きに場所とお金を使える独身貴族的生活を愉しまれる方を例外とすれば、オーディオの所有とはやはり家族と共有空間に於いてそのご家族の理解を、一般的には主に奥さまの理解と協力と言う事になるとは思うのです。

想像してみましょう。

今あなたはご結婚されて幸せな状況で、仕事に見合った収入と社会的地位を有し、素敵な内装の昨今の広いリビングを有す見晴らしの良い高台のマンションにお住まいになることになりました。オーディオ導入に関わる金額面自体は奥さまのご理解も得られて、投資出来る予算的部分もだいたい見当がつきました。

勿論音楽が好きで、よい音で音楽を愉しみたい訳です。

そのオーディオは勿論広いリビングで大型テレビと一緒に並べて家族で楽しみたいですネ。

さて、その予算範囲内で目一杯の性能とサイズを有す国産巨大重量20キロ超級アンプと、CD1枚回転させる為だけに「どうしてこんなに大きいの?」級のCDプレーヤーの組み合わせで重量級ラックをど~ん!みたいなモノが、素敵な奥様がチョイスされた調度品でセンス良くシンプルにまとめられた部屋に、唐突に周りとの調和なぞ一切気にしないかのような圧倒的な存在感で現出する配置完成予想図を、あなたはその空間で共に過ごすと想像される方、或いは今既に過ごされてる奥さまを思い浮かべた上で説得しきる自信は御座いますか?

私は難しいと思います、と言うより私個人は既にあきらめています。実のところリビングと呼んでいいかどうか怪しいレベルの部屋に、マランツのコンパクトなオールインワンのコンポが出窓の棚に追いやられている程度です。それでさえ邪魔だと言われます。私の職業オーディオ関係なんですが・・・

で、今回オラソニックと言う日本の新興ブランドのナノコンポと呼ばれる、筺体上面が一辺15センチ四方にも満たないとても小さなdac内蔵アンプとCDトランスポートの組み合わせを観て聴いて触って驚いたです、本当に。

一頃のミニコンポよりも遥かに、マイクロコンポと呼ばれた存在よりも小さいか同程度のこの組み合わせが、ちゃんと単品コンポーネントの持つ充実感を満たしてくれる幸せな鳴り具合。少なくとも音楽再現性に於いてはその価格帯から想像する範囲を見事に裏切る、圧倒的に上出来の期待以上の類。

これだったら置けますよ、皆さん。大きいオーディオ反対されて仕方なく手に入れた家電量販のミニコンポ(ミニコンユーザーさんゴメンナサイ!)とは訳が違います、ナノコンポはオーディオとして使って頂けます。だからスピーカーだけ信用に値するしっかりした物を部屋の隅に奥さまの理解を取り付けて何とか置いて下さい。

でも本来そこにバランス的に組んであげたくなる巨大なアンプやプレーヤーは一旦諦めてでも、このナノコンポだったら間違いなく置けるでしょうし家族の反対も受けないし音はダウンサイジング機器にありがちな性能的喪失感を感じさせません。

お店でも鳴らしているので、お近くの方は確認に来て下さい、でも確認しないで購入しても裏切られる事はまずありません。久しぶりに素直に感動したオーディオ製品です、こちらは。

小さいオーディオ機器を紹介する時によく使われる常套句としての「サイズを感じさせないなりっぷり」みたいな陳腐な言葉はこのコンポには必要なさそうです。

つまり同価格帯他社巨大躯体系他製品と比べて頂いても、音楽再生的にはこのナノコンポの方が上回っている面を感じさせられている自分を認めなければいけない点に、未だに大鑑巨砲主義的傾向を好まないと言えば嘘になる自らの思考回路そのものに恐怖を覚えさせられる鳴り方です。

ところでこのオラソニックって企業は一体なに?と思って調べたら、そのメンバーはかつて小型高性能をやらせたら右に出る存在の無かった日本の誇る超有名企業に在席されていた錚々たる方々のお名前が散見される凄い状況になるほどと納得。

勿論その超有名企業も現在でも存在しますが、小さくて高性能なラジオでアメリカ人驚かした頃の元気で生意気でカッコよかった頃の勢いをどこかで忘れ去って、収益の大半をゲーム機に頼ったり海挟んだ対岸の半島の国のパネルで薄型テレビこさえたり青い目の経営者呼んできたりしてるうちに、この会社の気風も技術力も、何よりここの会社の一番の魅力だった「存在のカッコよさ」という根本をあらかた失って、昔日の面影はそのブランドロゴ以外にはもうどこにもなく、その歌を忘れたカナリア企業から小さくて高性能でワクワクさせられて少し高くても欲しいと感じさせてくれるあのセンスはもう求めようがなくなったので、少なくともオーディオに関しては、今後オラソニックがその雰囲気を継承してくれるのだろうかと企業規模は違いますが、僅かながらでも希望の灯がともった様で個人的にはとても嬉しいですネ。

しっかしそれにしても、サルにイヤホン聴かせて目を瞑らせる様なCMを平然とこさえて僕らを驚かせ憧れさせたあの圧倒的企業センスは、一体どこに消えちゃったんですかねぇ?

追記:

「あいつはオーディオで偉そうな事いつもほざいている割には、奥さんの理解も得られず満足なコンポも持ってないのかね?」

ともし思われた方がいらしたらごめんなさい。

私の話を聞いてオーディオを購入頂くお客さま方を裏切らないで済む程度の話は出来るレベルの、一応こういった趣味性の高いモノを職業とする最低限のたしなみ及び何十年来の好きが高じての結果としての、大変面倒で場所を必要とするシステムは一通り、リビングではないのですがつかわさせて頂いております、念の為・・・

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